研究課題
テラヘルツ帯において、天体より到来する光子数の揺らぎを統計的に解析することでその輻射源の物理状態を解明できる可能性に着目し、テラヘルツ帯の天文観測手法に「光子統計」という新しい概念を導入することを目指す。これを実現するために、テラヘルツ帯での光子計数を可能にする新たな検出器システムの構築を推進した。テラヘルツ帯では1 Jyの典型的な天体から毎秒1億個の光子の飛来が期待される。そこで、量子型検出器であり高速動作が期待できる超伝導トンネル接合(SIS接合)を採用し、高感度実現のために1 pAを目標にリーク電流の低い接合の開発を進めた。これと並行して、低いリーク電流や検出器の光応答を計測するための極低温の試験評価装置も整備した。その結果、接合面積9 μm^2、電流密度300 A/cm^2の接合でリーク電流1 pAを達成した。また、SISの光学特性の評価によりテラヘルツ帯でも信号応答を確認でき、天体観測に求められる高い感度を実現できる見通しを得ることができた。この成果に基づき、アンテナと結合したSIS検出器の設計も開始している。また、検出器システムを構成する要素技術として、SIS検出器および初段の読み出し回路を極低温に冷却するためのヘリウム4吸着型冷凍器を開発し、到達温度0.8 K以下、保持時間約5時間の性能を達成した。これは従来のヘリウム3を用いた吸着冷凍器よりも冷却能力が高く、高速動作が必要な光子計数型検出器の実現に必須の技術である。これら主要な要素技術が開発できたことで、テラヘルツ帯の光子計数型検出器システムの実現に技術的な見通しを得ることができた。これらの成果は、光子統計を用いた新しい天文観測手法のみならず、強度干渉計の概念を用いた新たなテラヘルツ干渉計など、将来の新しい応用も期待できる。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 7件)
JAXA Special Publication
巻: JAXA-SP-17-009E ページ: 261-264
11th Superconducting SFQ VLSI Workshop SSV 2018 -- Program and Proceedings
巻: - ページ: 18-22