ニュートリノは素粒子・宇宙の謎を解き明かす重要な研究対象であると考えられており、ニュートリノが関わる希少事象探索に適した液体シンチレータ検出器を用いた実験の進展に期待が高まっている。本研究では、これまでの液体シンチレータ検出器では発光波長の違いを利用した発光点の区別を行い、外層や樹脂容器に含まれる放射性不純物に起因するバックグラウンドの大幅な削減を目標とする。この開発に成功した場合、二重ベータ崩壊や暗黒物質などの希少事象探索などの進展に大きく貢献すると期待される。 本研究では、短波長光に感度を持つ波長変換プレートを用いた集光による光量増加を利用して、発光点の区別に必要な光量差を実現する。この手法の原理検証及び測定の分解能を評価するため、小型プロトタイプ検出器の製作を行った。直径470 mm、厚み10 mmの波長変換プレートと8インチ光電子増倍管をシリコングリースによって光学的に結合させ、波長変換プレートからの全反射光が効率よく受光部まで導かれるようにした。一般的な液体シンチレータを用いて光子計数を行った結果、波長変換プレートによる光量の増加は1.58±0.06倍となり、シミュレーションで予測した1.52倍と誤差の範囲内で一致した。一方、波長変換材であるbis-MSBを添加した液体シンチレータを用いた場合には1.33±0.05倍と期待通りに光量の低下が起こることを確認し、発光点の区別に必要な十分な光量差が得られることが分かった。
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