研究課題/領域番号 |
15K13474
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
門叶 冬樹 山形大学, 理学部, 教授 (80323161)
|
研究分担者 |
住吉 孝行 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (30154628)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 中性子イメージング / ガス検出器 |
研究実績の概要 |
中性子線はX線やガンマ線と同様、物質を通過する際に吸収・散乱を受けるため、物質の構造や組成分に応じた透過画像を提供する。この中性子を用いて物体内部の情報を得る中性子イメージングは、近年、産業利用を含めて大変な広がりを見せている。この中性子イメージングの汎用性を上げるためには、感度が高く、優れた位置分解能と大きな有効面積を持つ中性子撮像システムを開発し、実用化に近づける必要がある。我々は微細な細孔で形成される細孔型マイクロパターンガス検出器の細管中に、放射線とガス分子との相互作用を限定することで、高感度かつ高い位置分解能を有する『放射線イメージング』が実現できることを見出した。 本研究では、素材中の水素による中性子散乱の影響が少ない鉛ガラスおよびホウケイ酸ガラスを新素材として、エッチング技法および吹きつけ加工の一種『サンドブラスト加工』を用いて新しく細孔型のマイクロパターンガス検出器を開発し、100 μmの空間分解能を持つ中性子イメージング検出器の実用化に向けた研究を進めている。 本年度は原子力研究開発機構で開発されたモンテカルロ計算コードPHITS(Particle and Heavy Ion Transport code System)を用いて中性子に対する細孔型MPGDの応答性を評価した。PHITSコードを用いたシミュレーションの結果から、3 μmの厚みを持つ10BをAl窓に蒸着し入射窓を作製し、中性子イメージング検出器を試作した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中性子イメージング検出器に用いる細孔型MPGDの素材として、300 μm厚のガラス基板に直径50 μm径の小さな穴が58 μm間隔で規則正しく無数に開いたガラスキャピラリープレートを用いた。中性子変換材として 10Bが蒸着されたAl窓を製作した。中性子と10Bの相互作用により発生したα線または7Liは、Ne (90%) + CF4 (10%)混合ガス中を通過する際に一次電子を生成する。その飛跡をCMOSカメラで撮像することができる中性子イメージング検出器を試作し、X線および中性子源で撮像試験を行った。また、原子力研究開発機構で開発されたモンテカルロ計算コードPHITS]を用いて中性子に対する細孔型MPGDの応答性を評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
100μmの空間分解能を持つ中性子イメージング検出器の開発を目的に研究開発を行う。 中性子変換材を近接設置した細孔型MPGDを専用ステンレスチェンバーに設置し、京都大学加速器中性子源KUANSまたは京都大学原子炉の中性子ビームを照射してイメージング特性試験を行う。中性子の直接用いるチェンバーに封入するガスは、ガス中での電子増幅時に付随して発せられるガスシンチレーション光をイメージングに利用するため、動作実績のあるAr+CF4ガス、またはNe+CF4ガスを用いる。細孔型MPGDの場合、ガス増幅中に発せられる光子の数は、Ar+CF4ガスに対して0.5光子/電子数と見積もられている。この光子数は、ガス増幅度300の時、5.9keVのX線に対して32000で、NaIのそれと比較して100倍以上あり、CCDタイプの撮像デバイスで十分に測定可能な発光量である。この細孔型MPGDからの発光を利用することで、放射線の飛跡を優れた位置分解能を持つ2次元ピクセル形式で読み出す。
|