研究課題/領域番号 |
15K13478
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関谷 洋之 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (90402768)
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研究分担者 |
吉川 彰 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50292264)
黒澤 俊介 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (80613637)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 暗黒物質 / シンチレータ / 方向感度 / 素粒子実験 / 宇宙線 |
研究実績の概要 |
今年度はこれまでの東北大で製作した結晶とウクライナで製作した結晶に加えて、ロシア二コラエフ研究所で製作した結晶を用いて研究を行った。このロシア結晶は、イタリアDAMAグループ(ADAMO)が最初のZnWO4で40%程度の異方性があると報告したものと同一のインゴットで製作した結晶から切り出したもので、同じものを使用することで直接の異方性の検証となる。この結晶は、ウクライナの結晶とは異なり、異方性の起源を探るべく、光学軸ではなく結晶軸になるべく沿うようにカットした。これらの結晶について、まず東北大およびシンクロトロン照射施設である国立分子科学研究所の極端紫外光研究施設(UVSOR)において、発光量、透過率、発光波長などの光学的評価を行った。その結果、きちんと意図するような結晶カットになっていることを確認した。また、低温での発光量変化を見たところ、20%程度の発光量増大を確認できた。 そして、2cm角にカットした結晶について241Amからの5.5MeVのα線を照射して、異方性を評価したところ最大で8%程度であった。DAMAグループの結果を再現せず、ウクライナ結晶や東北大結晶と同様の異方性であることを確認した。以上からZnWO4のα線に対する異方性はどの結晶でも8%程度であり、表面の状態に依存しているのではなく、結晶構造そのものに起因する効果であると判断した。続けて、結晶バルクの効果を直接見るため中性子照射による応答を測定すべく、まず252Cfからの中性子を利用する手法を検討し、プラスチックシンチレータを用いてTOFによる中性子のエネルギー測定を行った。 一方、異方性の由来を調べるべく、ZnWO4と同じ単斜晶系の結晶として(Gd,La)2Si2O7やGd2SiO5などの結晶を製作してα線による応答を見たが異方性は確認できず、ZnWO4に特有な性質であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たな結晶を製作するとともに、発光量などの光学特性評価について、実験室および分子科学研究所の極端紫外光研究施設(シンクロトロン照射施設)などを用いて、順調に評価を進めている。中性子応答を見るための実験も検討が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
大型のZnWO4結晶の製作を進めると同時に、低バックグラウンド化についても、まず低バックグラウンド化したイオン交換樹脂の用意にめどが立ったため推し進める。中性子に対する異方性測定では252Cfを用いて酸素反跳について100keV程度の低エネルギーでの応答を定量的に調べる。その後、中性子ビームラインを用いて、酸素反跳で10keV程度の測定とZn・W反跳の検出に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初最終年度にZnWO4結晶シンチレータの中性応答を東北大の中性子ビームを用いて測定する計画であった。しかし、製作した結晶の発光応答を調べたところ非常に遅く、ビーム実験で中性子飛行時間から中性子エネルギーを測定するにはデータ取得回路を工夫する必要が判明した。これまでビームタイムの申請を行わず、252Cf線源を用いた測定を優先して回路の最適化を行っており、期間を延長してビーム試験を行いたい。
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