本研究では,高屈折率の薄膜,媒体を利用し,複数の結晶シンチレータ小片があたかも1つの系として見なせる様な系の実現を目指して研究を行った.特に,大体積の標的が要求される暗黒物質探索に応用することを目的に研究を行った. 本研究でキーとなるのは,高屈折率と高屈折率の制御にある.結晶シンチレータは屈折率が大きく,表面で反射が生じ,結果,結晶が1つ1つに見えてしまう.これを解決する方法としては2つの方法,即ち,1)結晶シンチレータの表面に,結晶シンチレータをマッチした薄膜を生成し,その薄膜の加工によって反射率を低減する方法,2)結晶シンチレータの屈折率にマッチした媒体で充填する方法が考えられ,本研究ではこの2つのアプローチを試みた. 1)では,高屈折率の薄膜が可能かどうかから研究を進め,その結果,石英ガラス表面に屈折率1.9~2.3(薄膜厚さ50~80μm)を形成することに成功した.屈折率は化合物の原料組成と焼成温度の調整により変更することが出来,またディップ法を用いることが可能であるので,簡便に高屈折率の多層膜を生成することが可能と判明した. しかし,この方法を結晶シンチレータに適用した場合,結晶シンチレータの潮解性が大きい場合に白斑を生じる,結晶シンチレータの光学面の違いによって,薄膜の出来に違いが生じる,という2つの問題点も判明した.後者は,光学研磨や光学面に応じた薄膜生成などで対処可能とも考えられるが,前者は今後の課題となった. 2)では,屈折率1.76の樹脂によるポッティングによる方法を試みた.その結果,樹脂と結晶の間に隙間が生じる場合のあることが分かった.これは樹脂成形時の熱によるひずみに依るものと考えられ,条件出しが課題となっている.一方で,樹脂中のシンチレータは潮解すること無く,長期に安定しており,シンチレータの容易な取扱いという点では成果がみられた.
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