過去の宇宙線変動を復元には、アイスコア中に含まれるベリリウム10や樹木年輪に含まれる炭素14などの宇宙線生成核種を用いることが一般的である。しかし、アイスコアを用いる場合には、古い年代ほど、年層の圧縮により達成できる時間分解能が下がるほか、炭素14を用いる場合には、半減期があ5730年と短いため、約6万年前までの復元が限界である。 そこで本研究では、6万年以上前の年代でも1年分解能で宇宙線変動を復元する可能性を模索するため、古い年代でも1cm以上の年層を保持するトゥファ堆積物(トラバーチン堆積物)に含まれるベリリウム10 を用いた宇宙線強度変動復元の可能性を検討し、その手法を開拓することを目的としている。 本年度は、中国雲南省においてフィールド調査およびトラバーチン堆積物のサンプリングを行った。サンプリングを行った試料の年層についてベリリウム10測定のための試料調製を行い、東京大学総合研究博物館が保有する加速器質量分析計で初期解析を行った。分析結果に基づき、試料調製手法の妥当性の検証を行い、また、高精度を達成するために必要な試料量の検討を行った。
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