全ての電波検出器には「高統計」と「多帯域性」が求められると言っても過言ではない。現在、主流のアンテナ結合検出器は、1素子で1モードしか検出できなため多素子化が必須となる。しかも、周波数帯域毎にアンテナが異なる。結果として、高統計・多帯域性の追求には複雑さと多額の経費を伴う。これに対して、本研究はコンパクトかつ安価に、それらを実現する検出器の開発を行う。超伝導転移温度(Tc)特性を利用して周波数応答を決定するため、アンテナを一切持たないシンプルな構成となる。しかも、圧倒的な数のモード数を実現する(150ギガヘルツ帯では1素子で100モード)。「周波数応答性はアンテナで定義するもの」という従来の常識を覆す斬新なアプローチと、1素子で従来の100倍もの高統計を実現するアイデアの融合により、「高感度でもコンパクトかつ安価」な検出器を開発する。
昨年度に整備したエレクトロニクスとその制御ソフトウェアによって、素子の周波数特性を自動で測定することが可能になった。この機能を生かし、検出器の応答性能をシンプルかつ短時間で測定する手法を考案した。本研究グループが実際に作成した超伝導検出器を使用して、実データに基づきこの新手法の正しさと有用性を確認した。本成果は間も無く論文投稿予定である。
また、本研究成果を電波計測のみならず、可視光や放射線計測というより広い用途に展開するため、昨年度実装したトリガー機能を強化し、より複雑なデータ取得が出来るようになった。
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