研究課題/領域番号 |
15K13492
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
西口 創 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (10534810)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 素粒子実験 / 粒子測定技術 / 放射線検出器 / ダイヤモンド検出器 / ミューオン |
研究実績の概要 |
本研究課題では、放射線損傷への優れた耐性から近年注目を集めているダイヤモンド結晶を用いた放射線検出器を新たに開発し、これを大強度陽子加速器施設(J-PARC)にて実際の大強度陽子ビームによって照射し、その性能を実証するものである。そのため、従来とは異なる新しい合成ダイヤモンド結晶をインド工科大学ボンベイ校との共同開発でこれを供給し、本研究課題では、主にこの結晶の検出器としての実装、及び基礎特性試験を通じたビームモニタへの開発研究、を実施する計画である。 計画は2ヶ年で完了する予定で、平成27年度には、主に実験室にてセンサーの基礎特性試験・信号読出回路の準備、それら回路への放射線照射試験、等を実施して、J-PARCでの照射試験に備える。平成28年度には、これらの準備状況を踏まえ、実際に大強度ビーム環境下での照射試験を実施し、合成ダイヤモンド結晶の放射線検出器としての開発研究に目処を付けることが目標である。 初年度である平成27年度には、計画通り、信号読出回路の放射線照射試験を複数回実施(神戸大学・東北大学)し、優れた性能を実証した。また、検出器への大強度陽子ビーム照射試験の予備試験として、電子ビーム照射試験を東北大学にて実施した。更に、ダイヤモンド検出器を大強度環境下で運用するための動作条件の最適化の研究を、主に計算機シミュレーションにより進めた。 平成27年度に得られた以上の成果により、翌平成28年度には、当初の計画通り実際に大強度陽子ビームによる照射試験を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、初年度である平成27年度にセンサーの基礎特性試験を終え、平成28年度にJ-PARCにて実施する予定の大強度陽子ビーム照射試験に向けて、信号読出回路等の準備を完了させることになっている。平成27年度には計画されていた内容をほぼ終え、更に、ビーム照射試験の予備試験として、電子ビーム照射試験まで実施することが出来た。試験の結果、読出回路の検出器への実装方法に不具合が発見されたため、本番照射試験に向け、これらの改善作業を鋭意進めている。読出回路自身の放射線損傷への耐性は、別途、中性子・電子照射試験を実施し、問題がないことを確かめている。また、陽子ビーム照射試験では、検出器を陽子加速器のビームパイプ内に設置する必要があり、そのため、ビームパイプの内外、すなわち真空と大気の双方の間で、高電圧印加や電気信号取得を行う必要があり、高性能な真空電流導入端子(フィードスルー)を準備する必要があるため、平成27年度末にこれらの準備を終えた。従って、平成28年度に計画している大強度陽子ビーム照射試験に向けた準備は、ほぼ完了しており、当初計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に従い、平成28年度中に、J-PARCにおける大強度陽子ビームを開発中の合成ダイヤモンド結晶検出器に照射し、その性能を研究する。主に、電荷輸送効率を測定し、大強度放射線損傷による輸送効率の悪化を確認し、それを評価する。また、将来のビームモニタへの応用を視野に入れ、検出器周りの実装要素(信号読出回路・高周波ケーブル・真空機器・電流導入端子等)の開発研究も並行して進める。陽子ビームの照射試験実施時期は、加速器の運転計画との兼ね合いがあるので今の段階で確定は出来ないが、加速器の試験運転時に実施する方向で調整を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
インド工科大学ボンベイ校にて製作された合成ダイヤモンド結晶サンプルが、インドの共同研究者が日本へ出張する際に手荷物として持参されたため、当該サンプルの輸送費が不要になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
電子ビーム照射試験の結果、信号読出回路の検出器への実装方法に不具合が見つかったため、その改良施作に使用する。
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