本研究課題では、放射線損傷への優れた耐性から近年注目を集めているダイヤモンド結晶を用いた放射線検出器を新たに開発し、これを大強度陽子加速器施設(J-PARC)にて実際の大強度陽子ビームによって照射し、その性能を実証することを目指している。そのため、従来とは異なる新しい合成ダイヤモンド結晶をインド工科大学ボンベイ校との共同研究でこれを供給し、本研究課題では、主にこの結晶の検出器としての実装、及び基礎特性試験を通じたビームモニタへの開発研究、を実施する計画である。 計画は2カ年で完了する予定で、初年度(平成27年度)には、主に実験室にてセンサーの基礎特性試験・信号読み出し回路の準備、それら回路への放射線照射試験、等を実施して、J-PARCでの照射試験に備えた。最終年度(平成28年度)には、これらの準備状況を踏まえ、実際に大強度ビームを検出器試作機へ照射する前に、加速器ビームパイプ脇での放射線検知試験を実施した。通常、大強度加速器では、加速された粒子とビームパイプ内部の残留ガスとの衝突によりエネルギー損失が生じ、これに起因する放射線信号がビームパイプ脇で検知される(ビームロス信号)。ここではまず、ダイヤモンド検出器試作機をJ-PARC・MR加速器ビームパイプ脇に設置し、ビームトンネル内という高放射線環境化でビームロス信号を問題なく検知できる事を実証した。また、併せて単結晶・多結晶のダイヤモンド双方でビームロス信号のデータを取得、今後の開発方針を定めるための貴重なデータを収集した。本研究計画はここで終了するが、今回得られた知見を生かし、今後は今回制作した検出器試作機を改造し、実際のビームパイプ内部に導入、これに大強度陽子ビームを照射して、大強度ビームモニタとしての実際の運用の研究へと発展展開する予定である。
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