研究課題/領域番号 |
15K13494
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
佐伯 学行 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (70282506)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ビームダンプ / プラズマ航跡場 / ILC |
研究実績の概要 |
平成27年度はILCにおける衝突前のビームバンチ形状に近い形を仮定し、プラズマ航跡場によるビーム減速が行われるかをシミュレーションで計算した。具体的には、長さ方向(X)のシグマ=300 μm、断面方向(r)のシグマ=50 μm、ビームのエネルギー=250 GeV、エネルギーの広がりを0.1%と仮定して、プラズマ密度=(3x10^21/立方m)のプラズマ内にビームを入射した場合のプラズマ航跡場によるビーム減速を3mの長さに亘って詳細なシミュレーションで計算した。その結果、3mにおけるプラズマ航跡場の減速により、ビームは15%のエネルギーを失うことが確認できた。平成28年度は、このシミュレーション計算をさらに進めて3m以降のビームのシミュレーションを行うため、KEKの計算機センターを利用すると同時に、既に購入した専用ワークステーションを利用して計算機能力の向上を行った。しかし、これまでシミュレーション計算を行っていたUniversity of California at Irvine の研究協力者が転職のために当研究を続けることができなくなってしまった。同大学の学生がシミュレーション計算を行うこととなったが、シミュレーションに不慣れなために大きな進展が得られなかった。ビームの全エネルギーの減速計算が行われていないため、プラズマガスチェンバーの最適化などは未着手の状況である。研究の結果は、2016年10月に行われた海外国際会議 eeFACT2016 @ Cockcroft Institute at Daresbury Laboratory, UK で研究協力者のAlex Chaoにより報告・発表された。また、2016年11月に行われた海外国際会議 IEEE @ Strasbourg, France で研究代表者の佐伯により報告・発表された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成27年度は、ILCビームに近い単純なバンチ形状でプラズマ減速が行われるかを詳細なシミュレーション計算で確認することを最優先とし、3mに亘るプラズマ航跡場による減速で250Gevのビームが15%のエネルギーを失うことを確認することができた。平成28年度は、さらに研究を推進するため、KEKの計算機センターを利用したり、専用のワークステーション計算機を購入するなど、計算機能力を向上させたが、当初の想定より計算機能力がまだ不足している。また、研究協力者が、転職のために当研究を続けることができなくなってしまったため、現在は学生がシミュレーション計算を行っているが、シミュレーション計算に不慣れなために大きな進展が得られていない。このため、当初は想定していなかったが、研究代表者の佐伯もシミュレーション計算のプログラミングに積極的に関わることで、最も重要なシミュレーション計算を推進する体制を構築する努力を行っている。また共同研究者の所属機関が全世界に拡散していることから、時間的な制約と旅費の制約から、当初想定した年1回の小規模ワークショップの開催が難しい状況である。遠隔会議システムや国際会議への参加の機会を適宜利用して直接会合を行う努力をしているが、さらにグループ内の密接な連絡や議論を行う機会を増やす必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
250Gevのビームエネルギーを全てプラズマ航跡場による減速でビームダンプするシミュレーション計算を完了することを最優先課題とする。3mのビームダンプのシミュレーション計算では、3mの後半においてエネルギー損失率が減少する傾向が見えた。このため、距離が増すにつれてエネルギー損失率が減少するかを確認することが重要である。しかし、シミュレーション計算の主力のマンパワーが失われた状態にあるため、これに対する対策が必要である。プラズマのシミュレーション計算は、長い経験を要するものであり、簡単に代替のマンパワーを得るのは非常に難しい。このような状況で、我々の複数回の研究発表に触発されて、CERNやSLACのプラズマ研究グループが同じ研究課題でシミュレーション計算を始めたことが確認されている。これらのグループとの共同研究により、互いに足りない部分を補って、この研究課題を世界的な大きい共同研究グループによって推進できるかを検討する。また、現在はKEKの計算機センターのジョブシステムを利用しているが、さらにスーパーコンピューターの利用が可能かなど、計算機能力を向上させることも検討する。ビームダンプのガスチェンバーの最適化設計について、ガスの密度などパラメーターを変えたシミュレーション計算が必要であるが、詳細計算を繰り返すには計算機能力が不足しているため、システムを単純化した考察を開始した。研究協力者が当該課題とは違う複数の課題を担当しており多忙であること、また共同研究者の所属機関が全世界に拡散していることから、時間的な制約と旅費の制約から、当初想定した年1回の小規模ワークショップの開催が難しい状況であるが、遠隔会議システムや国際会議への参加の機会を適宜利用して直接会合を行うこととする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
H27年度に購入したワークステーション計算機に対する保守費用が発生しなかったために、当初予定した物品費の使用がなかった。また、旅費の経費を当初の予算額に合致させることは難しく、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
ワークステーション計算機に対する保守費用として使用すると共に、当初想定した年1回の小規模ワークショップの開催が実現していないため、そのための経費とする計画である。
|