研究実績の概要 |
平成29年度は海外研究協力者である Denis Perret-Gallix氏がシミュレーション計算のスキルを獲得したため、平成30年には同氏が神門氏の助言を得て、電子ビームに加えて陽電子ビームのプラズマ減速のシミュレーションを実施した。5月28日-6月2日に福岡で開催されたALCWS2018会議において、その成果を発表し、beam energy 250 MeV, beam part 6.5 x 10**8, bunch length 7.5 um, bunch radius 20 um のビームに対して12 cmで100 MeV (40%)まで減速できることを示した。しかし40%まで減速した後で減速が飽和するため、レーザーでfieldを誘起するactive modeでの減速について考察を行い、21 cm でほぼ100%の減速が可能なことを示した。その後、この方法を250 GeVのビームに適応してシミュレーションを継続した。しかし6月末にPerret-Gallix氏が突然死去するという不幸に見舞われ、再び研究が中断した。これに対して神門氏の共同研究者であるJames甲賀氏がシミュレーションを引き継ぎ発展させることになった。甲賀氏は、独自のアイデアで127 GeVの電子ビームをレーザーと衝突させるシミュレーションを実施し、電子のエネルギーを約半分まで減速し、それをプラズマでさらに減速する方法を考案した。この結果は、10月22日-26日に米国のTexas大学で開催されたLCWS2018会議にて報告された。さらにILCの設計において、既存のビームダンプの前段にプラズマ減速ビームダンプを設置してプラズマ減速実験を行うことを検討し、その結果を7月5日(開催場所:京都大学)と11月3日(開催場所:KEK)に開催された「ILCの多角的活用を考える会」にて佐伯と甲賀氏がそれぞれ報告した。これら一連のシミュレーションの実施は、KEKに設置した専用ワークステーションで行うと同時に、神門氏と甲賀氏が所属する量子研究機構(QST)のコンピューターでも行い、相互にデータの交換を行う方法を確立した。
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