本研究の目的は、グラフェンにおける電流注入型のランダウ準位発光(サイクロトロン発光:波長15μm、周波数20THz程度)を検出し、ディラック・ランダウ準位における非平衡電子ダイナミクスを明らかにすることである。特に、金属コンタクトと単層グラフェン界面で形成されるポテンシャル特異点(ホットスポット)に着目し、ランダウ準位N=1→0およびN=0→-1の発光を検出する。このランダウ準位発光を検出するために、次の二つの方法を用いた。(1)同一基板上にサブミクロンスケールで隣接したグラフェン・ホール素子を作製し、一方を測定対象(発光素子)、もう一方を検出素子とする。(2)量子井戸を用いた高感度な電荷敏感型赤外フォトトランジスタ(CSIP)を利用して検出する。方法(1)については、隣接したグラフェン・ホール素子によりグラフェン間の静電結合による寄与が観測された。THz応答の分離をするためにさらに実験・解析を要する。一方、方法(2)では、CSIPを強磁場中で動作させることに成功し、THz集光系により、グラフェン素子からのTHz発光を観測した。グラフェン・ランダウ準位に対するフェルミ準位の違いにより、発光効率が変化していることを見出した。
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