研究課題/領域番号 |
15K13505
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
石原 一 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60273611)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光アンテナ / 波長変換 / 局在プラズモン / コヒーレント光 / 超蛍光 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、金属微細構造による光アンテナによって赤外インコヒーレント光を「可視域で発光する分子」に凝集させ、可視“コヒーレント”光に変換する、全く新しい光学過程の機構を理論実証することである。この目的に沿って本年度は次の三つの成果があった。 [1]これまで申請者は、アンテナ-分子-応答場の三体の自己無撞着相互作用を考えることで、二準位系に反転分布が形成でき、さらに上方変換的な出力が現れることを明らかにしてきた。今年度はアンテナモデルについて実験結果を再現可能なパラメーターで表し、入射光をパルス光源へと拡張した。その結果、レーザーへの利得がある反転分布状態が形成でき、また、コヒーレント光源素子へのデバイス化の提案に向けて複数分子系への拡張手法を構築した。 [2]ナノギャップに分子が配置され、二光子上方変換が起こる系を多数配置した場合のモデル計算を行いった。通常は分子数が増えると少数光子非線形性は減退するが、アンテナ効果による横場を介した強い分子間相互作用により準位分裂が起こることでむしろ広面積を活かした(太陽光程度の入射でも可能な)高効率な上方変換が起こることを明らかにした。 [3]多数の分子の協力放射が高効率に起こる配置の設計を行い、一例として誘電体球のWhispering Gallery Modesと結合した多分子系が自由空間に比べて桁違いに効率的に協力放射を起こすことを明らかにした。またこの際に、分子の具体的空間配置に応じた遅延効果を正しく考慮した超蛍光の計算が出来る手法を初めて開発した。 以上のように本年は、波長変換的反転分布系からの協力放射、広域配置系の高効率協力放射の両面を理論的に研究し、目的の新奇コヒーレント光源デザインへ結びつく知見を習得することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
27年度は、結合振動子モデルによる複数分子の協力的発光の実証が出来たことは予定通りの進捗となっている。また共振器と分子を結合させた場合の上方変換発光も確認出来ている。フィードバック系を入れた場合の効果の検証や、金属光アンテナ-分子結合系の(幾何学的情報を詳しく考慮に入れた)具体的モデルの設計については現在推進中で、結果は来年度に持ち越されるが、一方で、二光子上方変換が起こる系を多数配置した場合のモデル計算、多数の分子の協力放射が高効率に起こる配置の設計など、当初予定を超える(かつ最終目的達成に叶った)成果が多く得られており、全体としては計画以上の進展があったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
28年度は以下のことを行う。 (1)結合振動子モデルに対して導波路モード、及び共振器モードを結合し、フィードバックがある場合の発光条件の探索を27年度に引き続き行う。 (2)直交型共振器を結合した系をモデル化し、レーザー発振の条件を探索する。さらに振動子結合モデルでも並行したモデル化を行い、この結果との比較検討を基礎にして作業を進める。 (3)上記項目で得られた知見を総合して、実験的に検証可能な系を具体的に提案する。特に試料作成方法、観測方法を含めた実験可能な系の提案になることに留意する。本研究については、現在、試料作製可能な北大電子科研の三澤グループ、測定技術を持つ阪大基礎工学研究科の芦田グループと密に情報交換しており、本研究課題後に、実験検証のための新たな課題へ迅速に進むことが出来る準備を整えておく。また期間終盤において研究のまとめと成果の論文化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度は、当初予定にくらべ、数値計算より解析計算の割合が想定外に大きくなったため、計算サーバーへの出費を抑えることが必要と判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
当初予定にある、博士課程学生の国内・海外学会発表、及び必要な計算サーバー。
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