研究課題/領域番号 |
15K13507
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
若林 克法 関西学院大学, 理工学部, 教授 (50325156)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グラフェン / 原子膜 / プラズモン / 遅延効果 / ドメイン / 磁性 / スピンデバイス / シリセン |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、グラフェン、h-BN(六方晶窒化ホウ素)あるいは酸化物ナノシートなどの原子スケールの厚みを持つ物質(原子膜)を、人工的にエピタキシャル積層した電子デバイス構造における電子・スピン伝導に関する微視的な理論、現象理論を構築することで、原子膜系に特有の量子輸送現象を解明することである。さらに、原子膜系を電子スピン素子へ応用するための基礎となる知見および、デバイス設計の指針を獲得することにある。原子薄膜超構造における電子・スピン伝導の構造依存性と周辺の誘電環境効果を明らかにする。また、端などの境界面が原子膜物質の電子物性に及ぼす影響を解明する。 上記の研究目的を達成するべく本年度は、ボルツマン輸送理論に基づく現象理論の構築に注力した。 (1) 種々の1次元および2次元電子系におけるプラズマ波の遅延効果の理論解析である。非常に高品質大面積のグラフェンでは、プラズマ波の分散関係がテラヘルツ領域で線形な分散をもち、電子と光との結合が良くなる可能性があることを指摘した。 (2) グラフェンでは、端、欠陥などにおいて局在磁性が発現することが知られている。我々は、化学気相成長で得られるグラフェンにおけるドメイン境界に着目し、そこでの電子・スピン状態を第一原理計算によって解析した。その結果、従来は極めて不安定と考えられていた3員環などの構造が、ドメイン境界では安定化される可能性があることを見出した。さらに、局在スピンが発現する可能性を指摘し、スピンフィルターデバイスなどへの応用可能性があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画はいずれも順調に進んでいる。特に、プラズマ波の半古典理論について、金属表面でのプラズマ波の不安定性解析、異種金属間における界面プラズマの解析が、想定以上に大きく進展した。さらに、photonic crystalにおけるエッジモードの解析などにも波及しており、原子薄膜系における境界面効果について新たな知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
ボルツマン輸送理論に基づく研究は大きく進展しており、来年度も継続して行う。また、シリセン・ゲルマンにおけるCaインターカレーションの効果については、第一原理計算による電子状態解析結果を出版しており、今後はフォノンモードの解析などを実施する。また、光との相互作用についても理論解析を行う予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
他の研究資金による物品購入により予算の節減がなされた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究を加速させるために必要となる物品を効果的に購入する。
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