研究課題/領域番号 |
15K13510
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野尻 浩之 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80189399)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 量子ビーム / 強磁場発生 / 波形制御 / 極端条件 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、東北大グループが世界をリードしているパルス強磁場下量子ビーム実験において、磁場発生技術を革新し、高精度化と時間発展観測という新しいブレークスルーを目指すことである。そのための新技術として、波形制御が可能でかつ高速繰り返しの次世代パルス強磁場発生技術を開発し、この技術を応用して超強磁場下量子ビーム実験の効率を高め、新しい展開をもたらす。 平成27年度は、パルスコイルの冷却効率の改善のために、コイル素材の絶縁-金属2層構造の複合化により冷却効率を高める技術を実証し、さらに冷却に用いる液体窒素寒剤の強制循環装置の開発を進めた。また、高速繰り返しが可能なコンデンサ電源装置の開発を進め、30Tの磁場発生では従来の半分のパルス磁場発生間隔を達成した。 このプロトタイプをスタンフォードの自由電子レーザー施設LCLSに持ち込み、ポンプ-プローブ型のホログラムイメージング実験のための磁場発生試験に成功した。さらに、冷却効率を高めた磁場発生系により、従来より効率よく強磁場中X線回折やX線吸収分光などの実験を行えることも実証した。 これらの結果は、これまで実施が困難であった、微弱信号を検出する量子ビーム実験の実現に道を開く重要な成果である。これらの成果については、日本物理学会等で発表を行った他、国際会議の招待講演などとして発表され、韓国物理学会での招待講演も決定している。さらには、J. Phys. Condens. Matter誌のReviewを依頼されるなど大きな注目を集めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は、この課題の中心である磁場発生技術の開発については、計画にそって順調に進展している。応用実験については、X線回折やX線分光については、実証実験に成功するなど十分な進捗があったが、一方、ポンププローブ実験については、共同研究相手側の問題で実験が遅延しており、今年度実施出来なかった。しかし、これに関わる磁場発生については、本課題の目的は達成されているため、全体の評価としては、概ね順調と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、今年度の研究結果を踏まえて、冷却技術のさらなる向上に取り組むとともに、波形制御型の電源を用いた実証実験を進める。ポンププローブ実験については、共同研究相手側の対応を踏まえつつ、必要な代替実験を実施する事で、計画目的を、確実に達成する事を目指す。
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