研究課題/領域番号 |
15K13512
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小池 洋二 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70134038)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高温超伝導 / インターカレーション / アルカリ金属 / 有機分子 / 鉄系超伝導体 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / 電荷密度波 |
研究実績の概要 |
本研究では、(1)超伝導転移温度Tc=8Kを示す層状物質FeSeに、金属と種々の有機分子のコインターカレーション(共挿入)を試み、Tcを向上させることを第1の目的とした。さらに、(2)層状物質であるMX2 (M=遷移金属;X=カルコゲン)にも、過去に例のない金属と種々の有機分子の共挿入を試み、新しい高温超伝導体を創製することを第2の目的とした。 第1の目的に対しては、FeSeにリチウムとヘキサメチレンジアミンC6H16N2を共挿入することに成功し、Tc=38Kの超伝導相とTc=41Kの超伝導相を発見した。 さらに、FeSeにリチウム、あるいは、ナトリウムと2-フェニルエチルアミンC8H11Nの共挿入にも成功し、それぞれTc=44Kと43Kで超伝導を示すことを発見した。このインターカレーション化合物は、これまで合成されているFeSeインターカーレーション化合物の中でFeSe層間距離が最も長く、最も2次元的な電子状態が実現していると考えられる。このTcはFeSeの単層膜のTcと同程度であるので、FeSeインターカレーション化合物とFeSe単層膜は、ほぼ同じメカニズムで超伝導が実現している可能性が高いと結論した。 第2の目的に対しては、電荷密度波(CDW)が実現しているTiSe2にリチウムとエチレンジアミンC2H8N2、あるいは、ヘキサメチレンジアミンC6H16N2を共挿入することに成功した。共挿入の結果、CDWは消滅し、2.2Kから4.2Kで超伝導転移を示すことを発現した。リチウムからTiSe層へのキャリアドーピング、あるいは、TiSeの層間距離が広がったことによる電子構造の2次元化によってCDWが消滅し、それによって超伝導が発現したと結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、5種類のインターカレーション化合物の合成に成功し、6つの新しい超伝導相を発見することができたので、順調に進展している思う。
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今後の研究の推進方策 |
第1の目的に対しては、FeSeの単結晶試料を作製し、多結晶試料を用いて合成に成功したインターカレーション化合物を単結晶試料で実現する。そして、それを用いて、異方性等の詳細な物性測定を行い、超伝導の発現機構を検討する。さらに、高温超伝導体(究極的には室温超伝導体)を探索する指針を得ることを目指す。 第2の目的に対しては、TiSe2以外の層状物質について金属と有機分子の共挿入を試み、さらに新しい高温超伝導体の創製を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の支出および旅費の支出をできる限り節約したため、若干の余剰金が出た。
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次年度使用額の使用計画 |
余剰金は、次年度に、物品費、旅費、謝金等で有効に使用する予定である。
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