研究課題
最終年度は、前年度までに整備した、常圧下の極低温高感度SQUID磁化測定のセットアップに対し、これにピストンシリンダーセルを組み込むことで、高圧力下への拡張を試みた。圧力セル及び関連部品のデザイン、工作を終え、高圧力下測定の準備は概ね終えることができた。また、当該セットアップを用いたAC帯磁率測定について、測定周波数を0.1 Hz以下までさらに拡張した。さらに、これと並行して、前年度に引き続き、カイラルスピン液体物質Pr2Ir2O7の磁化測定を行った。比熱測定、電気伝導度、ホール電導度測定を組み合わせることで、組成のわずかな変化と非従来型異常ホール効果の間に相関があることを明らかにした。また、中性子散乱実験等から明らかになったカゴメ格子反強磁性体Nd3Sb3Mg2O14のキャント磁性を伴うスカラーカイラル秩序について、期待される強磁性成分をDC測定により検出することができた。研究期間全体を通じて、常圧下の高感度SQUID磁化測定について、測定系の更なる整備を行い、数十mKに至る極低温度で、DCおよび0.1 Hz以下に至る低周波を含むAC測定が可能になった。さらにピストンシリンダーセルを用いた高圧力下測定の準備をほぼ終了することができた。今後、高圧力下測定を進めることで、β-YbAlB4における量子臨界相の熱力学特性の確立や、その他の物質における圧力誘起量子臨界現象の研究といった進展が期待される。一方で、常圧化のセットアップを用いて非磁性籠状物質PrV2Al20やカイラルスピン液体物質Pr2Ir2O7、およびカゴメ格子反強磁性体Nd3Sb3Mg2O14の磁化測定を行った。特にPrV2Al20においては、磁化の温度依存性の測定から、Γ3非磁性結晶場基底二重項における2段の多極子転移に対応するわずかな異常を確認することができた。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
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