研究実績の概要 |
希土類永久磁石は電気自動車の駆動部や発電機で使用され、エネルギー問題の解決に資するため、産業応用における重要性が今後ますます増してくると考えられる材料である。永久磁石では磁化と磁気異方性の両方が重要であり、鉄属元素Fe,Coと希土類がそれぞれに寄与する。希土類は希少資源であるが、Ceは特に安価で、一部の化合物では強い磁気異方性を出す。これをFe,Coの強磁性と結合させて高温で磁気異方性を発現させる方向で希土類永久磁石化合物候補の設計指針を探索した。 当初の戦略は重い電子系関連化合物において磁気異方性を出すCeと類似の状況を希土類永久磁石の中において実現することであり、Ceの価数を3価に固定することを目指してCe(Co,Cu)5合金のCuリッチ組成近傍の物性を精査した。初年度の終わりまでには3価Ce由来の容易面異方性とCo由来の容易軸異方性の競合によると考えられるスピン再配列転移を実験と理論計算の両面から低温において確認した。 二年目(最終年度)においてCeCo5の磁気異方性を第一原理から再考する過程で価数揺動Ceから異方性が一定強度の寄与を出していることに気が付いた。また Ce(Co,Cu)5系の温度・組成面上を網羅的に実験測定し、微視的な価数状態とバルク物性の両面から、価数転移点近傍におけるCeが巨大な磁気異方性を出しこれが高温まで生き残っていることを見出した。参照化合物CeRh3B2の高温磁化曲線測定からも非常に耐熱性の強い磁気異方性が見出された。CeRh3B2測定は関連研究において議論をかわしていた平山悠介氏の協力を得て実施された。 希土類から高温磁気異方性を取り出すためには希土類と鉄の磁気的結合を強くすることが重要であることがわかっている。当初めざした3価Ceにおける局在4f電子状態よりも、副産物として得られた価数揺動Ceにおける遍歴気味の4f電子の方が有用であった。
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