| 研究課題/領域番号 |
15K13529
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| 研究機関 | 東京大学 |
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研究代表者 |
觀山 正道 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (60639095)
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| 研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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| キーワード | データ駆動科学 / 機械学習 / スパースモデリング / 走査型トンネル顕微鏡 / 金属酸化物薄膜 |
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| 研究実績の概要 |
本年度はSTM のターゲットとして、重要な物質系である金属酸化物薄膜における実測データに対する原子位置・欠損位置の抽出を可能にするデータ解析手法の確立を目指し、これを完遂した。
計画初年度で構築したスパースモデリングを用いた関連ベクトルマシン最適化手法により、ピーク数未知かつ多数の２次元マップデータにおけるピークスペクトル分解が可能となった。これを実データに対し適応する際には様々な困難がある。すなわち、スペクトル分解に用いる基底関数の選択、またサンプル表面の鉛直方向の不均一性（すなわち、テラスなどの表面特有の構造）による誤判定などが挙げられる。しかしながら、東工大一杉研究室から提供されたSrVO3薄膜表面におけるSTMトポグラフィーデータに対する応用では、当初想定した二次元ガウス関数によるピーク分解が有効であることがわかり、実際に欠損の正確な密度推定、分布の特徴づけ、原子位置のゆらぎを高精度で定量化することが可能となった。特に、酸素原子欠損の分布に関しては、空間統計学の応用から4格子間隔程度までは排他的（欠損間の斥力の存在を示唆）、それより長距離のスケールではランダムな配置であることが明らかとなり、局所的な不均一さがもたらす物性発現の解明に重要な物理量を定量化したことが大きな成果である。
得られた成果は日本物理学会大会、国際統計物理会議（STATPHYS）により公表済みである。さらに、データ解析手法に関する論文を一本投稿中 (arXiv:1703.8643, Real-space analysis of scanning tunneling microscopy topography datasets using sparse modeling approachとしてプレプリントサーバー公開済み)、及び、SrVO3薄膜における欠損・局所歪み空間分布に関する論文を執筆中である。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度にあげたダミーデータ上でのデータ解析手法の構築・検証を踏まえて、二年度目は実際の試料に対するデータ解析を行い、大きな成果を得た。特に、金属酸化物薄膜中の原子欠損の空間分布について、フーリエ解析などを用いた従来手法では明らかにできなかった空間配置の特徴付けが得られた点については、単なるデータ解析を超えて、「物理」の抽出が実際の計測データから可能となったという点において、大きな成果を上げたと言える。
さらに、本研究計画提案当初に想定した物質系以外にも様々な物質系におけるデータ解析のニーズを拾い上げることができ、当初見込んでいたよりも多くのSTM専門家とのデータを通じた共同研究体制が構築できたことは想定以上の成果と言える。データ駆動科学アプローチの一例として、今まで抽出することが困難であった物理を定量化することが物質科学研究を質的に進化させる過程においては、多様な物質系におけるデータを収集し、解析し、テストケースを積み上げることが重要であると認識しているが、本研究計画はその点において大きな共同研究バックグラウンドを構築できている。
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| 今後の研究の推進方策 |
最終年度における大きな研究対象は、より広汎なデータを組み合わせた、電子物性の解明である。現状では、STMトポグラフィデータを主な入力として原子位置の推定を行ってきたが、本質的に物性発現に影響があるのは局所電子状態密度分布である。
STM 探針に印加するバイアス電圧を変化させながら、トンネル電流を測定することで、各電圧ごとの 電子状態密度分布を二次元マップデータ(として測 定することができ、このデータは各原子の電子軌道 がそのまま重ね合わされた情報を含んでいる。そこで、基本モデルで用いた二次元ガウス関数の代わり に、s軌道やp軌道といった対称性の異なる関数を基 底として統計モデルを構築し、各バイアス電圧にお ける電子状態密度分布のモデル推定を行うことを試 みる。基本的な手法は原子位置推定の場合とほぼ同一であり、用いる基底関数だけが異なるパラ メタ推定を行う。原子位置推定の結果と合わせ、注目する原子がどのような電子軌道を持つ原子 であるかを推定でき、今まで非常に困難であった原子種や相互作用の推定が可能となる。
この試みにおいては、多数のマップデータを組み合わせた推定を行うために、ベイズ統計にお けるモデルパラメタに関する事後確率分布をモンテカルロ数値計算により、求める高度な推定手 法の開発が必要となる。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
前年度で大きな予算配分を考えていたフランス・リヨンにおける国際統計物理会議（Statphys26）への渡航費について、想定より安価な航空券の手配が可能となったため、使用額が当初申請より少なくなった。
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| 次年度使用額の使用計画 |
論文執筆における英文校正費用に充当する。
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