第一年度に自己重力かつ無衝突系である恒星系の力学進化のモデル化を行った。本来2次元、もしくは3次元の現象だが、1次元振動子系として進化を調べる数値計算コードを作成し、位相空間での振る舞いを調べた。また、2次元回転系で、中心力場の元でのN=100程度の自己重力相互作用する粒子径の進化を調べるための重力多体コードを作成した。2016年3月にメルボルン工科大学(オーストラリア)において、銀河中心領域の自己重力多体系の力学進化と構造形成についての議論を行った。第二年度は、2次元の無衝突粒子回転円盤において、重力同様逆2乗則に従う相互作用を計算し、N=1000-10000程度で非定常渦巻き構造を再現した。その構成要素(粒子)の集団運動に関して詳細に解析したところ、角運動量ーJacobi積分空間において、非定常渦巻き構造の粒子は円運動から制限される領域から大きく外れずに振動運動することがわかった。これは、渦巻き構造に起因するポテンシャル摂動が起こすレゾナンスによる粒子の散乱が構造形成に効いているのではないことを示唆する。しかし、E-J空間で非線形振動運動をする粒子群の自己発現的な構造や非線形振動と、実空間の非定常構造とは直接の関連については不明であり、今後の研究が必要である。研究費は数値実験のシステム構築のための部品、および北海道大学において、関連研究者と銀河中心領域における重力多体系の構造形成についての議論のための旅費に用いた。
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