研究課題/領域番号 |
15K13542
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
道村 唯太 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80747006)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 光学浮上 / 光輻射圧 / 光共振器 / レーザー / 量子力学 / 巨視的量子力学 / エンタングルメント / 量子非破壊計測 |
研究実績の概要 |
本研究では1 mgというPlanck質量(22 ug)を大きく上回る質量を持つ2つの巨視的な鏡の間で量子エンタングルメントを世界で初めて実現することを目的としている。そのために、鏡を光の圧力のみを用いて支持する、光学浮上という新提案の技術を用いる。これまでに我々は、2つの光共振器ではさむことにより鏡を安定浮上させることが原理的に可能であることを発見したが、実験的実証は未だなされていない。 2015年度はダミー鏡を用いた光学浮上の原理検証実験を進めた。ダミー鏡は直径0.5 inchの鏡であり、2 g程度と重いためそのままでは現実的なレーザー強度で浮上させることはできない。そのため、ダミー鏡をねじれ振り子の一端にとりつけ、実効的な質量を軽くすることで原理検証を行う。原理検証には、鏡の水平方向の並進運動、水平な軸周りの回転運動に対して、光輻射圧による復元力が働くことを確認する必要がある。そのためにねじれ振り子の機械的な復元力は十分小さくなくてはならない。これを実現するようなねじれ振り子および光学系の設計を行い、装置の組み立てと性能評価を行った。 性能評価の結果、ねじれ振り子の機械的な復元力から来るダミー鏡の並進運動の共振周波数は17 mHz、回転運動の共振周波数は0.5 Hzであり、十分小さいことを確認した。また、共振器のフィネス測定から、2つの共振器のフィネスが1500程度と500程度であることがわかり、要求値を満たしていることを確認した。また、2つの共振器の同時制御を行い、浮上鏡をはさんだ複合共振器が安定に制御可能なことを実証した。 これらの性能評価は大気中で行われたものだが、光学浮上の原理検証には環境雑音や風の影響を避けるため、真空槽内で行われるのが望ましい。2015年度はそのための真空槽の整備も行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度はレーザー光源の安定化と、大気中でのねじれ振り子を用いた光学浮上の原理検証を進めるのが当初の目標であった。原理検証実験については、装置の組み立てや必要な性能評価がほぼ完了し、当初の目標を達成したと言える。レーザー光源の安定化については本年度は着手できなかったものの、2016年度に予定されていた真空槽の整備を行うことができたため、全体としておおむね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
2016年度はねじれ振り子を真空槽内に入れて光学浮上の原理検証実験を進める。光学浮上の実現が本研究の肝となるため、原理検証実験は重要となる。並行して、レーザー光源の安定化や防振装置などの開発を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究においてはねじれ振り子を用いた光学浮上の原理検証実験が重要となる。現在はアルミ製のねじれ振り子にダミー鏡を貼り付けたものを使っているが、製作精度の限界から自由度間のカップリングや有効質量の調整が難しくなっている。そのため、ねじれ振り子自体が高品質鏡として加工されたものが必要となる。2015年度設計を進め発注を行ったが、納品が2016年度となるため、2016年度に予算を使用する。
|
次年度使用額の使用計画 |
鏡面加工されたねじれ振り子は2016年5月に納品予定であり、この物品費として使用する。
|