研究課題
本研究では1 mgというプランク質量(22 ug)を大きく上回る質量を持つ2つの巨視的な鏡の間で量子エンタングルメントを世界で初めて実現することを目的としている。これにより、巨視的な世界においても量子力学は成立するのかという根源的な問いに実験的に答えることができる。我々は鏡を光の輻射圧のみを用いて支持する、光学浮上の新手法を提案した。2つの光共振器で浮上鏡を挟むことにより鏡の安定浮上と、現実的なパラメータでの標準量子限界到達が可能であることを示した(Optics Express 25, 13799 (2017))。2017年度はこうした原理的な計算に加えて、光学浮上の初の実験的実証に向けて原理検証実験を進めた。特に、浮上に至るまでの光強度調整の手順や光輻射圧による復元力の定量的な評価のために、ねじれ振り子を力センサとして用いた実験を進めた。ねじれ振り子の一端に鏡を取り付け、光共振器を組むことで光学浮上に必須となる水平方向の復元力を測定することができる。復元力はねじれ振り子の共振周波数の変化として測定することができるが、本年度は十分に力感度のよいねじれ振り子の開発と、光共振器を制御した状態での共振周波数測定方法の確立に成功した。これにより、十分な光強度を光共振器に蓄積することができれば、安定性検証ができることがわかった。しかし、十分な光強度を光共振器に蓄積するまでには至らなかった。本年度はその原因が鏡の複屈折に由来することをつきとめた。また、この複屈折の影響を除去し、かつ光強度をモニタするために必要な偏光ビームスプリッタの性能評価を進め、十分低い光学損失をもつことを確認した。以上のように、理論面・実験面の双方で研究を行い、鏡の光学浮上の実現性を高めた。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (35件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Optics Express
巻: 25 ページ: 13799~13799
10.1364/OE.25.013799
Classical and Quantum Gravity
巻: 34 ページ: 225001~225001
10.1088/1361-6382/aa90e3
http://granite.phys.s.u-tokyo.ac.jp/michimura/wiki/