研究課題/領域番号 |
15K13547
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
前田 公憲 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (70229300)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電子スピン / 磁場 / 電子スピン磁気共鳴 / 量子効果 / 過渡吸収 / 高感度計測 / 磁場効果 / スピンダイナミクス |
研究実績の概要 |
ラジカル対における電子スピンのダイナミクスを磁場やマイクロ波磁気共鳴といった,磁気的な相互作用をスピン系に相互作用させることにより,より量子論的なスピン系の操作を行い,コヒーレントな干渉性を見出すことを目的として,測定系の再構築を行った.従来の過渡吸収法では,光励起による非常に小さな過渡吸収変化を観測するのは困難で,一般に磁場効果を有効に観測するには10-1から10-2程度の過渡吸収が必要であった。しかし,生体分子は多くの場合サンプルが希少かつ濃度が低い,さらに光反応によりサンプルを消費する場合,光によりサンプルが劣化するため,長時間のデータ測定によるS/N比の向上が難しい.特に磁場効果の測定においては,磁場下と参照用のゼロ磁場下での測定をほぼ同じコンディションで行う必要があり,条件の安定性が求められる.そのため,光照射を小さく抑えて,小さな過渡吸収信号を高感度で測定する必要がある.このような目的から次のような測定法の改良を行った, 1)ダイオード励起パルスレーザによる,過渡吸収信号の発生を安定化させて,ショットごとのふらつきを軽減させる. 2)ダイオードレーザ光をプローブ光として用いて,バランス型検出器を利用することにより,参照光のバックグラウンド信号の問題を解決し,10-3オーダーの過渡吸収およびその磁場効果(10-4オーダー)を有効に検出可能にした. さらに,これらを用いてテスト系であるフラビン補酵素において,従来測定が困難であった過渡吸収による時間分解型磁場効果測定に成功した.これにより,これまで知られていなかった,磁場効果の時間変化を明らかにし,この結果がすでに得られている磁場効果のクエンチャ依存性とコンシステントであることも解っている.また,並行してマイクロ波磁気共鳴の効果を観測する装置も構築した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究費を利用して,パルスレーザ装置を購入した結果,非常に安定に過渡吸収を測定する事が出来,それと,ダイオードプローブCWレーザー,バランス型検出器を用いることにより,きわめて小さな過渡吸収信号を高感度で観測できるようになった.これらの展開はほぼ予期されていたことである.予想外に,プローブ光として強いレーザを使っているにもかかわらず,パルスレーザによる散乱光や蛍光が問題となったが,パルス磁場を用いることにより,過渡吸収では確認しにくいラジカル対の寿命をいくつも決定した.これは,予定外ではあるが,むしろ研究代表者:前田が過去から用いてきたパルス磁場法が非常に有効であることを示す結果となっている.当初予定した冷却装置の導入には苦戦しているが,今後測定系の改良との組み合わせにより対処していくつもりである. 並行して,マイクロ波磁気共鳴と過渡吸収との関連を測定する過渡吸収検出磁気共鳴装置の構築に成功した.この装置は従来から存在しているものではあるが,温度可変装置に組み込むことを目的として,プローブ光としてLEDを用いている.この装置はマイクロ波磁気共鳴による,スピンへの量子干渉の一つである,スピンロッキングを観測するのに有効であり,クライオスタットとの併用も可能で,スピン系を冷却し,よりスピン系の量子効果と化学反応との関連を観測するのに有効である.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度構築した装置を用いて,多彩な分子系における磁場,マイクロ波磁気共鳴の効果を観測していく.特に以下の内容 1)超低磁場での磁場効果を観測する事により,スピン系のコヒーレンスと化学反応の磁場効果との関連を,理論と実験から明らかにする. 2)パルス磁場,パルス磁気共鳴を利用して,ラジカル対の減衰を有効に観測するする事により電荷分離の効率と,スピンダイナミクスやスピン選択的な殿下再結合との関連を明らかにする. 3)これまでの光学的な検出に加えて,電気的な観測にトライする.すでに下準備を始めてはいるが,太陽電池などを用いて,その起電力や電気伝導度を過渡的に観測しつつ,スピン系をパルス磁場,マイクロ波で操作する.これにより,新しい電荷分離の観測法への道が開けることが期待できる. 4)強いマイクロ波,磁場,パルス磁場と低温での測定から,スピン系への量子干渉と化学反応との関連を追及する.特にスピンロッキングやスピンエコーによる量子系の位相緩和測定結果と,極低磁場効果の観測は,スピン系への量子干渉という意味において結びつく.これらを総合的に理解する事により,反応へのスピン効果の新しい側面に光を当てることができると考えられる. 5)結果のまとめと,報告.
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な物品の都合上,端数が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
28年度分と合算して有効に利用したい.
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