単一アンテナと慣性航法装置を用いたより消費電力の低いリアルタイム洋上部プラットホーム姿勢把握システムの開発のために,平成28年度は単一GNSSアンテナと小型のMEMSジャイロによる加速度・角速度データから姿勢モニタリングを実現する手法を開発した.用いた観測方程式は (1) 3軸角速度と姿勢角 (方位角・ピッチ角・ロール角) 変化率の関係式,(2) GPSアンテナ速度の変化量が加速度の積分量と回転による速度の変化量の和に等しいという関係式の2つである.各姿勢角の時間変動をスプライン関数で基底展開し,その展開係数を非線形最小二乗法で解いた.用いたデータはMEMSジャイロによる10Hzサンプリングの加速度・角速度データとキネマティックPPPにより解析した1HzのGNSSアンテナ位置データである.開発した手法を2014年に紀伊半島沖で係留試験を行ったブイの実測データに対して適用した.同観測ではGNSSジャイロによる高精度な姿勢把握も同時に行われており,それによって得られた値を真値として,それからのずれを誤差として結果の評価を行った.その結果,本手法で得られた姿勢角の誤差は19分間の各セットを8回評価した結果,RMSで方位角0.5度,ピッチ角で1.3度,ロール角で1.0度であった.得られた誤差について検討をした結果,MEMSジャイロの取り付け角にわずかな狂いがあることが明らかになった.そのためそれを補正した結果,方位角は0.5度,ピッチ,ロール角で0.4度と大幅にその誤差が低減できることを確認した.さらに角速度の測定精度がよいMEMSジャイロを用いることで,ピッチ角・ロール角についてはRMSで0.03度というきわめて高い精度で姿勢を把握できることが明らかになった.その一方で方位角に関してはGNSSアンテナ速度データの影響が大きいことも明らかになった.
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