研究実績の概要 |
利用可能な試料が限られているため、古地磁気強度絶対値変動については未だ研究が発展途上である。本研究では、新たな試料として海底堆積物中に普遍的に含有される「火山ガラス」に着目し、これらから古地磁気強度絶対値(API)を推定するための手法の検討・開発に取り組むことを目的としている。今年度は、最終的な学会発表と論文公表を目指し、昨年度までに得ていた各種測定データの再整理と吟味、一部の追加測定を行った。
日本周辺の海洋コアに普遍的に含有される広域テフラの1つである姶良Tn(AT)火山灰に対応する入戸火砕流堆積物の露頭から採取した試料から抽出した20~30メッシュ(595~841μm)の軽石型火山ガラス粒子は、噴出時に熱的なプロセスによって熱残留磁化(TRM)を獲得している可能性が高い。室内で常温で着磁する残留磁化として非履歴性残留磁化(ARM)と等温残留磁化(IRM)の2種類を用いAPI測定を行ったところ、ARMによる補正に基づくとAPIは 18.5~31.5 μT と求まる一方、IRMによる補正に基づくとAPIは 24.0~28.4 μT と求まった。後者によるAPIのほうが信頼度が高いと考えられ、平均APIである約 25 μT という強度は仮想地心軸双極子モーメントに換算すると約 50 ZAm2 であり、世界各地の海底堆積物から推定された過去 0-1.5Maの相対古地磁気強度(RPI)を複合させて得られたPISO-1500標準曲線(Channell et al.,2009)の 26-29 ka の期間における強度値とよく一致する。
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