研究課題/領域番号 |
15K13565
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
山本 圭香 国立天文台, RISE月惑星探査検討室, 特任研究員 (40452263)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 衛星重力観測シミュレーション / 時間変動重力場 / 惑星大気 |
研究実績の概要 |
本研究では、地球の大気とは異なる変動特性を持った惑星大気の循環を、大気質量の移動として考え、時間変動重力場観測によって捉えることを目的とした衛星重力ミッションの設計をおこなうことを目的としている。平成29年度は、主として、観測対象としての、金星、火星の大気の動的な特性の調査をおこなった。各惑星における支配的な大気現象、その惑星の表層環境の規定に重要な役割を果たしている大気現象、学術的に興味深く観測の意義のある大気現象について、関連文献を収集、調査し、それぞれの現象について、その空間的スケール、時間的スケールに関する情報の整理をおこなった。次に、シミュレーションに用いる惑星大気モデルデータの作成をおこなった。現実の金星、火星大気の観測データを利用することが難しそうであること、および、シミュレーションにおいては予期しないシグナルの混入は出来るだけ避けたいことなどの理由により、現実の惑星大気データを使用するのではなく、上記の調査結果に基づいた典型的なシグナルの大きさ、空間分布、時間周期を反映した仮想的な大気変動モデルを作成し、それを使用することにした。大気モデルデータは全て、本研究での軌道シミュレーションの目的に沿うよう、質量に変換した。これらのデータの作成の完了によって、前年度までに作成した軌道シミュレーションプログラムと合わせて、今後、遂行していくシミュレーションを実施できる環境が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度に完了するはずだった軌道シミュレーションのためのプログラムの作成に予想したよりも多くの時間を要したため、前年度の段階で、全体の研究計画がやや遅れがちであったことに加え、本年度は、当初、研究スケジュールを立てる際に予定していなかった所属機関の業務に関わる長期出張があり、さらに遅れが生じた。そのため、本年度に行うはずであった、軌道シミュレーション、ミッション設計の考察まで到達することができなかった。研究の遂行方法については、当初の予定と比べ特に大きな修正はなく、今後も予定通り進めていく方針である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、当初の研究計画に基づき、研究を推進していく。平成30年度は、平成29年度におこなうことができなかった、金星および火星の大気循環を重力によって捉えるためのシミュレーションを実施し、いくつかの最適な重力ミッション物理設計のシナリオをまとめる。火星においては、表面-大気間の質量輸送過程を定量的に論ずることができるよう、大気に加えて、表面の極冠の季節変化も合わせて検出するシナリオを考える。最終的に、従来の手法による気象観測結果から得られる情報に、これらの理想的なシミュレーションから期待される成果を加えることによって、惑星大気の理解がどの程度改善するのかを、その誤差レベル、空間、時間解像度、定量性、地球との比較などの側面から見積もり、評価をおこなう。得られた成果について、国際学会、論文誌にて公表をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本来予定していたH29年度の国際会議参加が上記進捗状況の遅れのため予定通り実行できなかったため、年度内の使用額に変更が生じた。 (使用計画) 昨年度からの繰越分の金額は、得られた成果の公表に使用する予定であり、国際学会への参加を予定している。
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