平成30年度は、これまでの研究において得られた惑星大気の知見に基づき、作成した軌道シミュレーションのためのソフトウェアを用いて、惑星大気の時間変動の重力測定衛星からの観測のシミュレーションを実施した。これまでの研究では、金星、火星双方の大気に注目し、調査を行なってきたが、より現実に近いグローバル大気大循環モデルが利用可能であること、天体の固体部分の性質が比較的よく分かっていることから、火星の大気を対象としたシミュレーションに集中することとした。約9年分の火星大気の循環モデルを解析し、そこから、特に注目すべき成分であり、シグナルも比較的大きな、表面気圧、ドライアイス 、水氷、ダストの年周、半年周、季節変動成分を抽出した。これらを現在得られている固体惑星部分の知見に基づいた荷重ラブ数を用いて、重力測定衛星からの観測量に対応する火星表面の面密度に変換した。重力測定衛星としては、マイクロ波を用いたL-L SST型、レーザーを用いたL-L SST型、重力偏差計型の3つの測定方式を仮定し、それぞれから上述の火星の表面質量変動のシグナルを検出可能であるかを調査した。また、より効率的な検出にはどのような衛星の軌道、各種パラメータのチューニングが必要であるかについて、軌道シミュレーションソフトウェアを用いて調査した。得られた知見を国際学会(2018 AGU Fall Meeting)において発表した。
|