研究実績の概要 |
本研究では、局所アンサンブル変換カルマンフィルタ(LETKF)を用いた既存の水同位体情報データ同化システム(Yoshimura et al. 2014)をベースに、モデルによって診断された全雲量(Total Cloud Cover)をデータ同化する変数とし、すべての予報変数(U, V, T, q, Ps)がその影響を受けるよう改変した。そのうえで、NCEP2再解析データ(R2)を真値とし、日本域の18地点で全雲量(以降単に雲量と記す)が観測されたとして、それらをデータ同化システムに投入した。観測標準誤差から得られる観測誤差をランダムに与え仮想的な観測データを作成するが、観測頻度は1日1回とし、天気は大きく3つに分けられるとして雲量の観測標準誤差は30%程度と大きく見積った。アンサンブルメンバーの初期値としては、あらかじめデータ同化なし実験を2005年1月1日から1年間走らせ、現実の大気状態と十分に独立した初期値を作成した。2006年1月1日時点の初期値アンサンブルから1か月間、データ同化を行い、真値であるR2データの雲量をはじめ表面気圧、気温、風速、水蒸気量、降水量などがどの程度近づくのか(或いは遠ざかるのか)を調べた。 その結果、雲量に関して、現実的な観測データ分布を想定した日本のほぼ全域で、データ同化によってアンサンブル平均値が真値に近づいており、データ同化システムが意図通り機能していることが示された。ほかの変数についても、雲量ほどではないが、データ同化あり実験のほうが、なし実験よりも日本及びその近辺で真値に近づいており、雲量をデータ同化することで、大気場にも良い影響がもたらされていることがわかった。これらの結果については、現在国際誌に投稿すべく準備中である。
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