研究課題/領域番号 |
15K13567
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
東 信彦 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70182996)
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研究分担者 |
本間 智之 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50452082)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 雪氷 / 氷床 / クリープ / レオロジー / X線小角散乱 / TEM |
研究実績の概要 |
気候に影響を及ぼすエアロゾル微粒子が積雪に取り込まれた後の挙動を知ることは氷床コア解析による古気候復元や氷床モデリングで極めて重要である。これまでの研究では、氷床コアから得られたエアロゾルの情報は、氷床コアを融解又は昇華した後の分析結果であり、in-situ 状態のものではない。本研究では氷床コア中のin-situ状態での、エアロゾル微粒子の大きさ、形状、表面フラクタル(表面構造)、数密度、組成、結晶構造などをX 線小角散乱(SAXS)および透過型電子顕微鏡(TEM)を用いてマルチスケール(nm~mm)で定量解析する先鋭的技術を開発する。 平成27年度は実験室レベルのSAXS 技術を確立するため、(1)シリカ(SiO2)単体、(2)氷単体および(3)氷床流動を模擬した変形前後の人工氷中のシリカの分散挙動の測定を可能とするため、SAXSの予備実験および冷却機能を有する試料ホルダーの開発を行った。試料ホルダーは低温室で試料の固定が可能で、持ち運びが可能なホルダーを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SAXSのデータ収集およびデータの解析に少々時間を要した。オーストラリアのANSTOの専門家との議論や、実験データの解析を通して10-20nmの球状シリカのサイズの定量解析を試み、実物の寸法をTEMを用いた解析により定量評価し、同じシリカをSAXSで評価することで、SAXSによる粒径測定の妥当性を検証した。一方、冷却ステージの開発は、液体窒素温度での使用を可能とし、空気散乱の影響を妨げるため、低温室で真空引きが可能なホルダーを設計するのに議論を行ない、予算獲得後約1年後にホルダーの設計をほぼ確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
人工氷中に10-20nmの大きさのシリカ粒子を分散させ、その濃度を変更することで、SAXSで検出可能なシリカ濃度を定量的に評価する。また、既知のシリカ濃度の人工氷を、氷床流動を模擬したクリープ条件で圧縮変形させ、変形前後におけるSAXSのデータに変化が生じるか検討する。特に、ナノスケールのシリカ粒子が変形後に粒界に偏析するか否かを検証し、氷床中のエアロゾルや超微粒子が塑性流動に及ぼす影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、TEMを用いて人工氷中に分散したシリカの直接観察を試みる。TEMの消耗品や維持費に使用する料金およびクリープ実験に使用する消耗品を新たに購入する必要が生じる。
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次年度使用額の使用計画 |
上記研究計画に基づき、氷試料を保持するための炭素支持膜付きメッシュやマイクロトーム用ダイヤモンドソーの購入、ロータリーポンプのオイル交換費用や窒素ボンベ取り付け工事および窒素ガス購入費、TEM試料の冷却および人工氷作成用の液体窒素の発注やシリカサンプルの購入などを計画している。
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