研究課題
気候に影響を及ぼすエアロゾル微粒子が積雪に取り込まれた後の挙動を知ることは、氷床コア解析による古気候復元や氷床モデリングで極めて重要となる。これまでの研究では、氷床コアから得られるエアロゾルの情報は、氷床コアを融解または昇華させた後の試料を分析した結果であり、in-situで測定した結果はほとんどない。本研究では、氷床コア中のin-situでのエアロゾル、微粒子の大きさをX線小角散乱(SAXS)を用いて定量解析する先鋭的技術を開発した。平成27年度に氷のSAXS測定用のホルダーを完成させ、平成28年度は直径10~20nmのシリカを人工氷中に分散させ、SAXSデータを取得することに成功した。シリカは人工氷中で凝集体を作り、SAXSで測定可能な粒径は、この凝集体の大きさを測定可能であることがわかった。その際、シリカ添加量が1wt.%を越えると、シリカの凝集体の大きさが、SAXSで測定可能な分解能である100nmを越えてしまい、測定ができなくなることもわかった。平成29年度は、グリーンランドや南極で見られる氷床の変形を模擬するために、シリカ添加氷に圧縮荷重を加えることで氷床流動を模擬し、-5℃、0.5MPaの条件でクリープ変形を施し、ひずみの増加にともなうシリカ凝集体のサイズの変化を定量的に評価した。この結果、直径50μm程度の人工氷のクリープ変形では、応力指数が2程度となり、クリープひずみの増加とともにほとんど粒成長を起こさないことがわかった。その際、シリカの凝集体は主として粒界に偏析していることが粒成長挙動から予想され、なおかつ、ひずみ15%までは凝集体のサイズは緩やかに低下し、15%以上のひずみにより粗大化する様子が確認された。これは微細な人工氷のクリープ変形時に、粒界拡散および粒界すべりをともなう変形が生じることを示唆することがわかった。
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