研究課題
氷晶核(氷形成能力を有するエアロゾル粒子)の存在は、極微量であっても、雲形成の初期過程に多大な影響を及ぼす。しかし、その計測は技術的に難しいとされており、観測データが非常に不足している。水滴凍結法(エアロゾル粒子を含む水滴を低温ステージ上で冷却することで、それらの粒子の氷核活性を計測する手法)は、雲生成チャンバーや氷晶核計を用いた方法と比較し、より手軽に氷晶核を計測できる技術として知られている。しかし、従来の水滴凍結法は、エアロゾル粒子を含まない水滴であっても、理論値よりもかなり高い温度で凍結し始めてしまうため、約-20℃以下の温度での氷晶核の計測には適さないと考えられてきた。そこで初年度(平成27年度)には、より幅広い温度範囲でも適用できる新しい水滴凍結法の開発に取り組んだ。その結果、約-30℃~0℃と非常に幅広い温度範囲内で適用できる実験系(CRAFT: Cryogenic Refrigerator Applied to Freezing Testと命名)を確立することに世界で初めて成功した。最終年度(平成28年度)には、CRAFTに関する最初の技術論文をScientific Reports誌に発表した(Tobo, 2016)。さらに、CRAFTによる大気中の氷晶核計測の実用化も進めており、コロラド州立大学(CSU)と共同研究では、CSUの氷晶核計等との計測精度の比較実験を実施した(DeMott et al., 2017)。また、2016年7月と2017年3月には、スバールバル諸島・ニーオルスンにて集中観測を行い、北極圏のようなクリーンな環境下であっても、CRAFTであれば、超低濃度状態にある氷晶核を計測可能であることを実証した。その他にも、2016年8月からは、東京スカイツリーに開設した大気観測サイトを利用した氷晶核の通年観測を既に開始している。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (3件)
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 32930
10.1038/srep32930
Atmospheric Chemistry and Physics
巻: 16 ページ: 7195-7211
10.5194/acp-16-7195-2016
http://researchmap.jp/yutaka.tobo/
http://www.researcherid.com/rid/D-9158-2013
https://www.researchgate.net/profile/Yutaka_Tobo