海洋観測においてこれまで用いられてきた電気伝導度センサは、換算した絶対塩分の値に誤差を生じる特性があり、測定精度についても海洋研究の要求を満たしていなかった。そこで本研究では、絶対塩分をダイレクトに計測可能な屈折率センサを開発することを目的とし、分光干渉計と光周波数コムを組み合わせた計測技術の開発により、従来センサの20倍の測定精度を実現することを目標とする。
初年度である平成27年度は、海水用および純水用として、光路長40 mmのセルをそれぞれ用意し、市販のレーザー分光干渉変位センサを用いて屈折率差の測定を行った。この結果から、屈折率による絶対塩分の計測で従来の電気伝導度センサと同等以上の分解能を有することを確認した。また、屈折率センサの信頼性評価に必要な絶対塩分の測定のため、液中秤量装置を用いた標準海水の密度測定を実施した。
最終年度(平成28年度)は、恒温水槽中で高精度に温度制御した状態において屈折率計測を可能にすべく、新たにに光路長50 mmの密閉型円筒セル2つを導入した。ひとつを参照物質である純水で満たし、他方に海水を充填することで屈折率差を測定可能な干渉計を構成した。さらに、平成27年度に用いた市販のレーザー分光干渉変位センサに代わり、発振波長範囲420 nm~2 μmを持つ広帯域光周波数コムを光源として採用し、同波長帯域における干渉スペクトルを光スペアナにより測定することで、純水を基準とし海水の屈折率を高精度に測定可能なことを示した。
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