研究課題
ビート信号の検出を共鳴散乱ライダーによる鉛直風観測と並行して行うために、国立極地研究所開発の共鳴散乱ライダー観測機能を持つ高機能ライダーシステムに初年度に開発・製作したビート検出システムを省スペース化して組み込んだ。具体的には、初年度の実験結果から決めた計測器の要求仕様に基づいてより適当かつ制御パソコンに内蔵可能なデジタルオシロスコープを選定、ベンチ型オシロスコープにかえてこれを導入した。送信レーザーの基本波パルスと種レーザー(連続光)のビート検出実験を繰り返して取得されたデータには、検出するべきビート信号の直前に、これと同程度の周期と強度を持つ、レーザー発振時にかかる高電圧起源と考えられるノイズが常に存在した。ビート信号からレーザーの周波数差を13MHz(風速5m/s)以内の高精度で得るためには、このノイズを除去する工夫が必要である。同軸ケーブルにフェライトコアを用いる物理的なノイズ対策と、信号解析時にビート信号部のみを取り出す解析的なノイズ除去を並行して試みている。このビート検出システムを組み込んだ高機能ライダーシステムは、極域で鉛直風を含む観測を行うために南極昭和基地に移設した。2016年9月に梱包、10月に南極観測船しらせに積載し、11月に出国、12月末に昭和基地に輸送された。2017年1-2月に高機能ライダーシステムの再構築を行い、3月から共鳴散乱ライダー観測時のビート検出実験を始めた。実験室環境(特に室温の変化の仕方)が大きく変わり、高機能ライダーシステムの送信レーザーであるアレキサンドライトレーザー自体の発振がなかなか安定しないため、まだ極域の鉛直風観測には至っていないが、国内での実験時と同様にビート信号が取得できることは確認できている。今後、共鳴散乱ライダー観測を行う中で、更なる検証実験を行いつつ極域における中間圏・下部熱圏領域の鉛直風観測に挑戦する。
すべて 2016
すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)