平成28年度の実施内容は、調査航海における研究と試料分析による研究に分かれる. 調査航海は平成28年10月に東海沖の第二天竜海丘南西斜面で無人潜水機NSSに搭載されたサブボトムプロファイラーを用いた海底調査を行なった.前年度と比べシロウリガイ巨大コロニー付近を中心とした解像度の高い地下構造断面と海底映像を取得できた.さらに船搭載のサブボトムプロファイラーを使用し巨大コロニー付近の海底下構造を探査した.地形補正と動揺補正を施した結果,地下断面には小規模な断層が多数確認できた.これらのデータを元に解釈すると巨大コロニーは小台場断層系の活断層変位に伴って形成されたものであると考えられる.巨大コロニーの北側では,今回の調査で新たに東北東-西南西に伸びるトラフ型構造を確認した.巨大コロニーの南側に存在する小台場断層系と同一走向であることから,小台場断層系に含まれる断層であるとみられる. 試料分析においては,シロウリガイの巨大コロニーで採取された貝試料と底層水の放射性炭素年代測定を行った.従来,シロウリガイは海底から湧き出る湧水に含まれる古い炭素を主に活用して貝殻を形成していると考えられてきた.しかし今回の試料分析の結果,古い炭素の使用は僅かであり,この地域のシロウリガイは貝殻と軟体の成長は別の栄養源,特に海水中に溶け込んだ炭素を主とした成長システムがあることが明らかとなった.これにより貝試料に適用可能な新たな年代補正モデルの構築を行うことができた.
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