研究課題
冥王代の特異な地質プロセス(生命誕生と初期進化や縞状鉄鉱層形成など)を解明するための研究において最大の障壁は、冥王代の海水組成が全く分かっていないことである。したがって、冥王代の海水組成進化を明らかにするための最も重要な第一歩として、初期条件である原始海洋の組成を復元することが必要である。原始海洋は、地球形成直後の高温原始大気にもともと含まれていた水が高温の雨(強酸性亜臨界流体)となり地表に降り注ぎ地殻と反応しながら冷却されることで形成されたと考えられる。本研究課題では、新たな実験方法を開発し、この亜臨界状態からの冷却過程を室内で再現することで「地球史上最初の原始海水組成を復元する」ことを目的としている。平成27年度は、強酸性亜臨界条件に耐えうる反応セルの開発を試みた。チタン製蓋とそれを覆う純金製カバー及びチタン製蓋内部金パイプを設計し、装置の組み上げ及びリークテストを行った。しかしながら、純金製パーツの接合部(チタン製蓋用純金製カバーと純金製バッグ、及びチタン製蓋用純金製カバーとチタン製蓋内部金パイプ)のいずれかにおいてリークが発生した。これは、接合部の圧着がうまくいかなかったためであると考えられる。一方で、高濃度CO2封入法の開発については、純金正反応セルを液体窒素で冷却しながら水を氷として、また、CO2はドライアイスとして封入することを試みた。しかし、封入時に液体窒素が反応セルに入り込んでしまうという問題が発生した。封入するCO2の量の不確定性がある程度大きくなってしまうが、液体窒素の代わりにドライアイスを用いることでこの問題を解決できることがわかった。
3: やや遅れている
本研究の目的は、強酸性亜臨界流体に耐えうる高温高圧岩石水反応装置を開発し、原始地球における原始海洋形成プロセスを再現することである。平成27年度は装置の開発を試みたが、当初の計画では安定的な装置の運用ができないことがわかった。一方で、高CO2封入法については当初計画した方法ではうまくいかなかったものの、封入に使用する冷却材を液体窒素からドライアイスに変更することで問題を解決できることがわかった。したがって、当初の計画にあった作業を行ったものの、目的を一部達成できなかったことから、進捗状況は「やや遅れている」とした。
平成28年度は、純金製パーツ接合部の圧着を確実に行うために、可能な限り高温で加熱しながら純金製パーツの圧着作業を行う。これにより、強酸性亜臨界流体に耐えうる高温高圧岩石水反応装置の開発を行い、ブランク実験及び岩石と強酸性亜臨界流体を用いた実験を開始する。
平成27年度は、完全に純金で覆われた反応セルの開発を完了することができず、当初予定していた2回のブランク実験を行うことができなかった。したがって、これに係る消耗品費について平成28年度に繰り越した。
平成28年度は、反応セルの開発を再度行い、ブランク実験を行うための消耗品費に使用する予定である。これにより、本研究で開発する反応セルが強酸性亜臨界流体に耐えうるかどうかを評価する。ブランク実験が成功した場合は、当初の予定通り岩石と強酸性亜臨界流体を用いた実験を行い、データを取得する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Progress in Earth and Planetary Science
巻: 2 ページ: 1-11
10.1186/s40645-015-0076-z
Nature Communications
巻: 6 ページ: 1-8
10.1038/ncomms9604