研究課題/領域番号 |
15K13583
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
渋谷 岳造 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 深海・地殻内生物圏研究分野, 研究員 (00512906)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地球史 / 冥王代 / 原始海洋 / 高温高圧実験 |
研究実績の概要 |
冥王代の特異な地質プロセス(生命誕生と初期進化や縞状鉄鉱層形成など)を解明するための研究において最大の障壁は、冥王代の海水組成が全く分かっていないことである。したがって、冥王代の海水組成進化を明らかにするための最も重要な第一歩として、初期条件である原始海洋の組成を復元することが必要である。原始海洋は、地球形成直後の高温原始大気にもともと含まれていた水が高温の雨(強酸性亜臨界流体)となり地表に降り注ぎ地殻と反応しながら冷却されることで形成されたと考えられる。本研究課題では、新たな実験方法を開発し、この亜臨界状態からの冷却過程を室内で再現することで「地球史上最初の原始海水組成を復元する」ことを目的としている。 平成28年度は反応セルの改良を行い、前年度に失敗したブランク実験を行った。実験期間を約1ヶ月とし、実験中に強酸性亜臨界流体を採取し、イオンクロマトグラフィー・ICP-OES分析を行った。実験期間を通して塩素濃度が変化しなかったことから、ブランク実験は成功したといえる。また、バルブの材質であるチタンの溶出も限定的であり、溶液採取時に約2ml廃棄すれば、チタンの溶出に汚染されていない反応溶液を採取できることが明らかになった。一方で、その他の元素のブランクとして、わずかに純金反応セルに含まれる不純物の溶出が起こることが明らかになった。したがって、純金に含まれる不純物については実験の目的に応じて検討する必要性があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、強酸性亜臨界流体に耐えうる高温高圧岩石水反応装置を開発し、原始地球における原始海洋形成プロセスを再現することである。平成28年度は、前年度に完了できなかった装置の開発及び改良を継続して行い、無事完了した。一方で、研究開始時の計画で予定していた岩石粉末と強酸性亜臨界流体を用いた実験については、実験準備(試薬の調合、金パーツ加工等)を行ったものの実験までは至っていないため、進捗状況を「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
実験手法開発が完了したため、平成29年度は岩石組成を変えた実験を行う。これにより原始海洋形成プロセスを再現し、平成29年度中に原始海水組成に制約を与えることを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、完全に純金で覆われた反応セルを開発し、ブランク実験を完了することができたものの、研究開始時に予定していた岩石-強酸性亜臨界流体反応実験(原始海洋形成プロセス再現実験)を行うことができなかった。したがって、これにかかる消耗品費について平成29年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に、岩石-強酸性亜臨界流体反応実験を行うための消耗品費として使用する。具体的には、高純度塩酸、実験装置消耗品(チタンヘッド、純金製部品、耐圧チューブ等)に使用する予定である。
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