研究課題/領域番号 |
15K13584
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
ジェンキンズ ロバート 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (10451824)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 層位古生物学 / 生態系 / 食物連鎖 / 海洋生物学 / 分子化石 / アミノ酸 |
研究実績の概要 |
本研究は近年発展しつつある生物体に含まれる各アミノ酸の窒素同位体比を用いた栄養段階推定法を化石に応用するための基礎的研究である.本年度は,1)生物の軟組織と硬組織中のアミノ酸窒素同位体比に基づく栄養段階が同一になるかの確認,および2)H28年度に実施する化石殻体への応用を目指した試料採集と化石試料の保存状態の評価を実施した. 1)生物の軟組織と硬組織中の個別アミノ酸窒素同位体比分析に基づく栄養段階の推定値の一致性の検討 栄養段階が約2.0となる藻類食者のサザエを対象としてサザエの殻の保存状態を肉眼,実体顕微鏡,走査型電子顕微鏡を用いて観察し評価した.その上で,サザエの殻から保存状態の評価が容易な真珠層のみを削り出し,適宜洗浄したのちにアミノ酸を抽出し,誘導体化を行って同位体比質量分析計を用いた分析を行った.その結果,軟組織とほぼ同一値を取り,本手法が硬組織中のアミノ酸にも適応可能であることが確認できた. 2)化石殻体への応用を目指した化石試料の採集と保存状態の評価 北海道中川町などに分布する地質体に含まれるメタン湧水堆積物から化石試料を採集した.化石試料はクリーニングをしたのち,貝殻破断面を作成し,その断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察した.これによって初生的な微細殻体構造が保存されているかを確認した.観察結果から初生的な微細殻体構造を保持している化石を選択した.これらはH28年度の分析に供する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた生物の軟組織と硬組織のアミノ酸窒素同位体比の一致性の確認,および,H28年度に分析予定の試料採集に成功し,H27年度の予定実施項目は問題なく完遂した.
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は化石試料を主たる分析対象として,特に貝殻殻体の結晶内と結晶間の有機物を分別して分析する.分析に際しては貝殻の保存状態を電子顕微鏡による微細構造の観察などで評価しながら行う.また,研究計画では当初,化学合成細菌と共生している二枚貝について重点をおいて基礎研究を行う予定であったが,化石試料中に含まれるアミノ酸の窒素同位体比に基づく栄養段階が,続成過程において変化しないかを確認するために,サザエ類などの藻類食者の化石試料について重点的に分析することとした.これにより,より厳密に個別アミノ酸の窒素同位体比に基づく栄養段階推定法の化石に応用する際の続成評価が可能となる.
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