近年発展してきた生物試料に含まれる個別アミノ酸窒素同位体比に基づく食物網解析(栄養段階推定)法を化石に応用するための基礎実験を展開した.栄養段階が約2(藻類食)と想定されるサザエの現生(非加熱,加熱200℃,加熱400℃),化石(鎌倉時代と縄文時代)試料を対象として,殻の微細構造の観察と殻体内アミノ酸のD/Lとアミノ酸組成,アミノ酸窒素同位体比分析を行った.その結果,400℃加熱では殻体内アミノ酸が消失していたが,それ以外はすべて殻体中にアミノ酸が残存し,その組成は現生非加熱と類似していた.また,同位体比から計算される栄養段階は想定される約2となり,本手法が化石に応用可能であることを示した.
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