本年度は、2015年に若狭湾で採取した海底堆積物試料WB6コアの年代決定をするため、浮遊性有孔虫殻の放射性炭素年代測定を行った。その結果、上部500 cmは過去3万6千年間に連続的に堆積したことが明らかになり、本研究課題でターゲットとする最終氷期最盛期(LGM)が深度およそ300cmに相当することがわかった。LGM相当層準からクランプトアイソトープ分析用の浮遊性有孔虫の拾い出しを行った。クランプトアイソトープ分析については、実サンプルの再現性向上のために前処理装置・方法の見直しを行った。また、複数の水温復元手法を比較するために試料の一部について酸素同位体とMg/Ca分析を行った。 珪質鞭毛藻群集組成からLGMにおける日本海の海表面水温を復元することを目的とし、暦年代で5 kaから30 kaの層準を研究対象にWB6コア試料の分析を行った。珪質鞭毛藻の産出状況は、最終氷期において、高緯度に生息するStephanocha属が多産し、コア上部になるにしたがって中低緯度に生息するDictyocha属が増加した。種レベルの観察によって、3属18種1変種1型の珪質鞭毛藻化石を同定した。定量的な水温変化を復元するため、ベストモダンアナログ法を適用したところ、表層水温の復元値は最終氷期に5°Cを示し、最終氷期の水温が低かった。また先行研究では12 kaに対馬暖流の流入が再開したとされていたが、本研究ではそれより約3千年早い15 kaに水温が上昇し始めたことを示唆した。12 kaの復元表層水温は14°Cで、現在の同海域における表層水温と同程度になるため、この時期には対馬暖流の流入は完全に再開していたことがわかった。
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