研究課題/領域番号 |
15K13586
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
大野 剛 学習院大学, 理学部, 准教授 (40452007)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 炭酸塩 / マグネシウム / カルシウム / ストロンチウム / 同位体分別 |
研究実績の概要 |
本研究では、マグネシウム・カルシウム・ストロンチウムなどの金属元素が炭酸塩鉱物沈澱反応の際に炭酸塩鉱物の結晶構造の違いを反映した同位体分別を起こすメカニズムを解明し、それらの知見をもとに金属元素の同位体比を用いた新しい環境解読指標を開発することを目指している。 本年度は、恒温槽とpHコントローラーを用いて温度およびpHを制御した環境下で、炭酸塩鉱物の種結晶を入れないで、純粋な結晶構造(カルサイト・アラゴナイト)を合成する方法を確立した。また、これらの手法を用いて、pH依存の同位体分別を起こすことが知られているホウ素から同位体分別の結晶構造依存性の有無を調べた。 ホウ素の同位体比は多重検出器型誘導結合プラズマ質量分析法を用いて高精度に分析を行ったところ、カルサイト・アラゴナイト間に有意な違いがみられた。これはホウ素がホウ酸イオンとして炭酸塩鉱物に取り込まれる際に結晶構造に依存した同位体分別を起こすことを示唆する結果である。これらの知見から金属イオンの水和錯体においても、結晶に取り込まれる際に結晶構造の違いで同位体分別の大きさが異なることが示唆された。 また、放射光を用いたXAFS法によるマグネシウムの局所構造解析により、アラゴナイト中のマグネシウムは水和状態のまま取り込まれている可能性が示唆された。この結果は、アラゴナイト中のマグネシウムの同位体分別がカルサイトに比べ小さいことと調和的である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多重検出器型誘導結合プラズマ質量分析計の故障により、今年度予定していたカルシウムの高精度同位体分析法の確立に遅れが生じたため。
|
今後の研究の推進方策 |
放射光を用いたXAFS法により金属元素の結晶構造に依存した同位体分別が起こるメカニズムを明らかにする。さらに、多重検出器型誘導結合プラズマ質量分析計を用いたカルシウム同位体分析法を確立し、天然炭酸塩鉱物試料に含まれる金属元素の同位体比から地球環境変動変動について新しい知見を抽出することを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していたカルシウム同位体分析法の開発が遅れ、次年度の金属元素同位体比測定に必要な研究協力者の人件費として使用する必要が出たため。
|
次年度使用額の使用計画 |
高精度金属元素同位体分析法を確立し、本研究を推進する目的で、研究協力者の人件費として使用することを計画している。
|