生命の誕生にとって初期地球での非生物的なRNA形成は必要不可欠なステップであると考えられている。一方で初期地球での合理的なRNA形成過程が見いだせないことが生命の起源解明にとって大きな課題となっている。本研究ではヌクレオチドからRNAが形成する際に鉱物の結晶面がテンプレートとしての役割を果たすと考え、鉱物表面でのヌクレオチドの重合によるオリゴヌクレオチドの形成に挑戦した。テンプレート鉱物はジプサム、カルサイト、対照実験としてガラス、ポリプロピレンを用い、重合単位のヌクレオチドには4種類を用いた。反応溶媒としては尿素水溶液とホルムアミドを用いた。これらの、基板、ヌクレオチド、溶媒のほとんどの組み合わせで実験を行なった。これらの組み合わせのうち、32Pラベル電気泳動で検出した実験ではジプサム基板、ガラス基板共に数量体のおりゴヌクレオチドが生成していた。この結果は大変重要であるが、質量分析計や蛍光ラベル電気泳動では再現できておらず、また、基板による差も見られないことから、研究結果として論文などにまとめるにはさらに実験が必要である。また、アメリカの共同研究施設に本研究のために滞在した時に、本研究に関連する実験も行なった。それはヌクレオチド形成のためにホウ酸を含むルネバガイトという鉱物がリン酸の供給源になって、ヌクレオシドをリン酸化してヌクレオチドにする反応が進むのではないかという仮説を検証するものである。この反応もRNA形成における鉱物の役割という意味で本研究と深く関連している。この研究では上記の仮説が的中し、ホウ酸の働きによって、ルネバガイトという非水溶性のリン酸源のリン酸が反応に供給されることを示した。この成果はAngewandte Chemie International Editionに"very important paper"として掲載され、表紙に選ばれた。
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