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2016 年度 実施状況報告書

衝撃鉱物マスケリナイトの構造マッピングと火星隕石形成史の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K13589
研究機関東北大学

研究代表者

杉山 和正  東北大学, 金属材料研究所, 教授 (40196762)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードシンクロトロン放射光 / 隕石 / 鉱物 / 長石
研究実績の概要

本研究は、火星隕石に存在するマスケリナイトの構造を原子レベルで解明し、衝撃圧縮実験を通じて得られた合成マスケリナイトの構造と比較検討することによって、火星隕石が受けた衝撃レベルを推定する実験的な研究である。
本年度は、3種類の長石試料の衝撃圧実験を実施した。Ca単成分に近いAn組成、Na単成分に近いAb組成および天然のマスケリナイト組成に近いAn-Ab固溶体の良質な単結晶試料を準備し、申請者の所属組織における化学分析および結晶構造の評価に基づき衝撃圧縮実験試料を選定した。そしてこれらの試料に関する衝撃圧縮実験を、熊本大学において行った。衝撃圧縮実験後、回収した試料の構造に関しては、東北大学にて動径分布解析を実施し、本年度完了した溶融ガラスとの構造比較を進めている。
また放射光を用いた解析実験に関しては2つの項目を進めた。高エネルギーX線回折に関しては、1年目のゴニオメータの改作に加えて、微小結晶のセンタリングシステムを作製準備した。しかし現状は、PF実験施設の高エネルギービームラインは本年度ほとんど稼働しなかったため、不十分ではあるが実験室系の装置を利用し構造解析を進めた。もうひとつの微量元素の存在形態を決定するマイクロXAFS実験に関しては、PFにて実験を行い高精度のスペクトルを取得するための蛍光計測システムの変更に着手した。
衝撃圧縮プロセスによって得られた希少鉱物の構造解析も並行して実施した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究計画の中では、①熊本大学における衝撃圧縮実験、②高エネルギーX線を用いた動径分布解析および③マイクロビームを用いた微量元素の存在形態の解明がキーポイントとなっている。本年度の研究推進によって、衝撃圧縮実験に必要な試料の準備、衝撃圧縮回収試料と比較する溶融ガラスを用いた動径分布解析などに関しては、計画通りの進捗状況にある。しかし、①に関しては熊本地震の影響のため予想していた通り十分な実験が実施できず、3種類(9試料)予定していた回収試料が約50%の試料回収率であった。また、放射光実験に関しても、高エネルギービームラインが半期にわたって操業しなかった事実および微小領域の蛍光測定に関しても設置されている検出器の改造が必要であることが実験経過で判明した影響で、研究進展に若干の遅れが生じている。

今後の研究の推進方策

本研究のポイントである3つの項目に、研究計画時には想定できなかった問題がそれぞれに発生した。しかし衝撃圧縮実験は2017年1月より軌道に乗り、予定したのこり半数の試料の合成のめどは立っている。また、放射光の高エネルギービームラインも秋から定常運転で稼働し、改造の結果従来より高強度のX線の利用が可能となった。また、微量元素のマイクロエリア分析に関しては、検出器の変更が昨年度末終了したので、本年度は着実に実験が進むと考えている。

次年度使用額が生じた理由

熊本地震の影響およびPF高エネルギービームラインの長期停止などの影響で出張実験が予定通り実施できなかったため、衝撃圧縮実験および高エネルギー実験に利用する物品調達費および出張旅費の執行が滞り使用額の相違が生じている。また、高エネルギー回折実験がビームライン改造のため計画通りに進まない対応として、当初の計画を変更して動径分布解析マッピングシステムは本所に新たに整備中の微小領域解析システムの利用する計画に変更したため、対応する物品費の購入計画が変わり使用額の相違が生じている。

次年度使用額の使用計画

XAFS法に用いるマイクロマッピングに関してはほぼ計画通りに進んでいる。しかし、主として高エネルギー放射光実験の実験時間に制約があるため、研究計画の遂行に遅れが生じている。この対応策として、当初放射光実験施設において微小領域のマッピング解析および高分解能解析の両者を実施する計画であったが、マッピングは所属機関で行い高分解能測定を放射光で行う計画に変更した。物品費は、本所の微小領域を高エネルギー回折実験に対応させるために使用する予定である。また昨年度1月より、衝撃圧縮実験の計画的実施のめども立ったので、熊本大学に出張し積極的に実験を進め、本研究を完遂する計画である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Local structures of Ca, Ti and Fe in meteorite fusion crusts.2016

    • 著者名/発表者名
      T Tobase, A Yoshiasa, T Hiratoko, H Hongu, H Isobe, A Nakatsuka, H.Arima, and K Sugiyama
    • 雑誌名

      Journal of Physics: Conference Series

      巻: 712 ページ: 012095

    • DOI

      10.1088/1742-6596/712/1/012095

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Weathering and precipitation after meteorite impact of Ni, Cr, Fe, Ca and Mn in K-T boundary clays from Stevns Klint.2016

    • 著者名/発表者名
      Yumiko Miyano, Akira Yoshiasa, Tsubasa Tobase, Hiroshi Isobe, Hidetomo Hongu,Maki Okube, Kazumasa Sugiyama
    • 雑誌名

      Journal of Physics: Conference Series

      巻: 712 ページ: 012097

    • DOI

      10.1088/1742-6596/712/1/012097

    • 査読あり
  • [学会発表] XAFS法によるデボン紀―石炭紀および白亜紀―古第三紀境界層粘土中のTiとZrの局所構造解析:隕石衝突と大量絶滅の検証方法2016

    • 著者名/発表者名
      鳥羽瀬翼、マッシモネスポロ、吉朝朗、本宮秀明、小松俊文、前川匠、奥部真樹、有馬寛、杉山和正
    • 学会等名
      日本結晶学会
    • 発表場所
      水戸
    • 年月日
      2016-11-17 – 2016-11-18
  • [学会発表] XAFS法によるK-RG境界層年度のTi局所構造解析:新たな巨大隕石衝突の痕跡の可能性2016

    • 著者名/発表者名
      鳥羽瀬翼、吉朝朗、ネスポロ マッシモ、本宮秀明、磯部博志、奥部真樹、有馬寛、杉山和正
    • 学会等名
      日本鉱物科学会
    • 発表場所
      金沢
    • 年月日
      2016-09-23 – 2016-09-25

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公開日: 2018-01-16  

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