当初予定していたガルバノ光学系を採用したレーザーが初期段階で故障し、その後研究期間中では復旧できなかったため、急遽、通常の試料移動方式により、三次元測定を試みた。基本的動作は通常行われている面分析法を用いたため、空間分解能が数十ミクロン程度になってしまった。このため、結晶の大きさが数百ミクロン程度以上あれば、分配係数測定が可能な定量分析値がえられる事が出来たが、本研究の本来の目的である、10ミクロンを切るような高い空間分解能での分析は出来なかった。その結果、複雑な組織を持った高圧実験試料の分析を行った場合には、近傍にある結晶からの干渉のため、充分な定量分析結果を得られなかった。 本研究を行った結果、今後より精密な測定を行うための、三次元分析特有の問題点も明らかになった。それは3次元分析を行うと、第1層目とそれ以降の層の分析で、信号強度に差が認められた事である。この原因は、一層目の測定では表面を研磨した状態の試料を分析しているが、二層目以降はレーザー照射後の荒れた表面状態で分析しているため、レーザー照射により切削される試料量が表面状態により異なるためと考えられる。各層ごとの切削量を正確に求めようとすると、各層を測定するごとに毎回試料を取り外して高分解能顕微鏡等で詳しく観察する事が必要であるが、顕微鏡観察のために試料を移動させると、試料位置を正確に元に戻すことが困難であるため、三次元分析としての位置精度が悪化してしまう。このため各層の切削量を物理的に直接測定するのではなく、主成分元素の測定量などを用いた補正計算法を今後開発する必要がある。また現時点では、ICP-MSデータとレーザー照射位置との照合は、最終的には人間が目視で微調整しているが、今後三次元測定の位置精度を向上させるためには、精度良く自動的に照合する技術も開発する必要がある。
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