研究課題/領域番号 |
15K13596
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久保 友明 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40312540)
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研究分担者 |
加藤 工 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90214379)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 深発地震 / 高圧変形実験 / AE測定 / 電気伝導度 / 固液2相系 |
研究実績の概要 |
高圧下で部分溶融時に発生するAE: DDIAに6-6型高圧装置と多端子AE測定を組み合わせたAE6-6システムにおいて、これまで数GPa、約700℃程度であった本システムの利用可能温度を、実験セルを改良することで約1200°Cまで拡大し、玄武岩の部分溶融実験に対応できるようにした。高圧下で変形を伴わない条件で部分溶融実験を行った結果、試料部ではなく試料周辺部から10回程度のAEが検出された。これは試料部の部分溶融による体積変化に起因するかもしれないが、今後より詳細な検討および追加実験が必要である。 単純剪断変形場を実現する実験セルの開発: 液相の連結度と塑性変形、剪断不安定化への影響を明らかにするため、これまでの純粋剪断変形場に加え単純剪断変形場での実験が行えるよう実験セルの開発を行った。ピストン表面に凹凸を施しピストンと試料部の摩擦で単純剪断変形場が生じるよう改良を行った。急冷回収実験に加え放射光のX線ラジオグラフィーを用いて試料の変形場を観察した。二次元X線回折パターンにおけるd値の方位角依存性から剪断変形による応力場の主軸の変化を読み取ることも可能である。しかしこれまでの実験では単純剪断成分が卓越する結果となっている。脱水変形を伴う条件での実験も行ったが、やはり単純剪断成分が卓越する結果となり、断層形成などの剪断不安定現象も現れなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はキャンパスの移転が行われ、本研究に関連する実験機器は高圧装置も含めて全てシャットダウンして移設し再度立ち上げを行った。それに予想以上に時間をとられたため特に実験回数が不足している。部分溶融条件下でのAE測定は可能となったが、体積変化に起因するAEかどうかを調べるための系統的な実験が不足している。またD-DIAの作る単純剪断変形場が卓越する環境において、実験セルの改良のみで純粋剪断の変形場を作ることは当初の予想以上に困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度から新たに学振研究員が連携研究者として参加し、メルトの放出速度(体積変化速度)を変えるために昇温速度をパラメータとした部分溶融実験、また剪断変形場での部分溶融実験を系統的に行い、体積変化に起因したもしくは剪断不安定に起因したAEの発生条件をさぐる。特に純粋剪断変形が困難な場合はより容易な斜め剪断変形場を取り入れて実験を進める。モーメントテンソルを解析し、AEの発生が体積膨張によるものか断層運動のようにダブルカップルであるかなど、実験条件によって震源プロセスに変化が現れるかどうか検討する。予定では次年度当初から交流インピーダンス測定にも着手する予定であったが、現状の進捗状況を考慮し次年度後半以降に遅らせることとする。また液相の連結度に加え、特に脱水反応においては放出された液相の周囲へのpermiabilityを変化させた実験も検討する。これまではほぼ開放系での実験であったが、試料部周辺の物質を変化させてより閉鎖系に近い環境も実現し剪断不安定プロセスへの影響を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究費はほぼ当初の予定通りに使用したが、若干の次年度使用額が発生している。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額を足し合わせても当初の予定額とほぼ変わらない。そのため当初の予定通り使用する。
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