研究実績の概要 |
稍深発地震の原因として蛇紋石の脱水脆性化が有力なメカニズムとして挙げられるが、矛盾する結果も多く未だに高圧下での断層形成条件は明確になっていない。本研究では部分的に蛇紋岩化したかんらん岩の大歪み領域での変形挙動に着目し、アンチゴライトとオリビン二相系試料のせん断変形場での変形挙動を明らかにする研究を行ってきた。今年度はせん断変形実験セルのさらなる改良を行い、その技術と放射光単色X線その場観察および多端子AE測定を組み合わせ、変形の局所化および不安定化について検討した。変形実験は 5-7GPa, 400-700°Cのアンチゴライト安定領域および脱水領域の両方において行った。二相系試料の固相領域では, 変形初期段階に均質変形から局所変形が卓越していく様子がラジオグラフィーでその場観察され、せん断歪み速度と局所変形面でのスリップ速度の測定も可能であった. 回収試料には、せん断方向と平行に著しい局所変形が生じ断層が形成されており, 断層面には 100nm 以下の細粒物質が観察された. この挙動はアンチゴライトの量比が30-50%のときにより顕著となるが、AE活動や歪みマーカー時分割測定などからこのスリップはせん断不安定化を引き起こすものではないと予想される。一方で、その後の昇温脱水時には剪断変形が激しくなり小規模のAEが多発しており、せん断面において不安定なすべりが発生している可能性がある。単相系では固相剪断変形においてB剪断面に近い局所化が起こるものの脱水時も含めてAEは発生せず安定すべりが卓越する。これらの実験結果を国内の学会にて報告し、実験セルの技術開発に関する結果をSPring-8の成果報告集に投稿し受理された。その場観察実験のデータは系統的にほぼ得られているおり、変形の局所化と不安定化が起こるプロセスを詳細に検討して国内外の学会で発表し、その結果を論文にまとめる。
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