研究課題
(U-Th)-He系の年代測定法を発展させ新世代の熱年代学の手法を開発し,造山作用や大陸成長に伴い変化する地球表層環境の長期変動の理解に貢献することである。(U-Th)-He系は閉鎖温度が低いため,山脈形成過程のような低温領域の地球史復元に有効な年代測定法である。もし鉱物中のHe濃度のゾーニングが測定できるようになれば,その鉱物が辿った熱履歴を完全に復元する道が拓かれる。しかしながら,Heの局所分析は,現在のところ,最高で数十μm領域に限られていて,α粒子リコイル損失の飛程を超えられていない。本研究では,独自に開発している新原理で動作する質量分析計LIMASを改良することにより,鉱物のサブミクロン領域における(U-Th)He系のその場年代測定に挑戦する。本年度は以下の研究成果が得られた.1. サンプルチャンバーのビューポートを真空二重構造に工作した.2. ビューポートガラス間の中間空間をターボポンプにより高真空に保つ機構を製作した.3. 4He信号のブランク値と中間空間の真空度との相関を測定したが,直接の相関を認めることができなかった.4. 一次イオンカラムの収差補正機構部の高電圧導入用のフィードスルーに微小の真空リークがあることを見出し,フィードスルーに追加工を行うことにより真空リークをストップした.その結果,4He信号のブランク値を約1桁減少させることに成功した.5. U, Th濃度と形成年代が既知のジルコン結晶標準物質#91500を用いて4Heを検出できた.そのヘリウム濃度は,U-Th-He法の関係式から推定した場合,脱ガスしていないと仮定すると約55 ppmであった.
2: おおむね順調に進展している
初年度に計画していた基礎実験をほぼ予定通り実行できたため.
1.ジルコンの4He濃度を,サブミクロンの分解能で測定する測定法を開発する.定量補正にはHeを既知量イオン注入したジルコン単結晶を用いる.2.ジルコン中のHe拡散実験を行い,拡散の温度依存性の決定を開始する.3.オーストラリアジャックヒル地域のジルコン結晶の測定を開始し,冥王代・大古代ジルコンの熱年代学を開始する.4.鉱物中の成長中心から表面までのHe,U,Thの濃度プロファイルを解析することにより鉱物1粒から熱履歴を求める.
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 6件、 査読あり 10件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 8件) 学会発表 (32件) (うち国際学会 23件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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