研究課題
窒素は大気の主成分であり、生命活動にも欠かすことができない元素であるが、地球深部での挙動と濃度は十分に理解されていない。本研究ではマントル、特に下部マントルを構成する鉱物への窒素の取り込みについて高温高圧実験と二次イオン質量分析計を用いた測定から取り組んだ。下部マントルの主要鉱物であるブリッジマナイトへの窒素固溶量を求めることを当初の目標として研究に着手した。愛媛大学地球深部ダイナミクスセンターの共同利用により、マルチアンビル高温高圧発生装置を用いて下部マントルに相当する温度圧力条件で下部マントル鉱物の合成を行った。出発試料には窒素源として窒素同位体(15N)でラベルをした硝酸アンモニウムを用いて、大気起源の窒素と区別できるように工夫した。回収試料にはブリッジマナイト(MgSiO3)、スティショバイト(SiO2)、ペリクレース(MgO)の結晶が生成した。これらの結晶を対象として、大気海洋研究所のNanoSIMSを利用して窒素を酸化物イオンとして検出した。ブリッジマナイトとスティショバイトについてはSiOイオンで規格化することで窒素量の比較を行った。ここで挙げた3つの鉱物からはいずれも窒素が検出された。これまでブリッジマナイトについては20 ppm程度の窒素が溶け込むことがYoshioka et al.(2018)で報告されているが、本研究の結果ではスティショバイト、ペリクレースにブリッジマナイトよりも多くの窒素をが取り込まれうることを示唆している。今後はSIMS分析のための標準試料を作成し、精密な定量分析を行う予定である。本研究により、下部マントルが重要な窒素のリザーバーとなり得ることが明らかになった。今後の研究の発展が期待される。
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