研究実績の概要 |
U-Th核年代法によるプレソーラーの年代測定には、U・Th濃度が極めて低い鉱物の測定が必要となる。しかし、現在の技術では1pg以下のU・Thを高精度で定量することは非常に難しい。そこで本年度は、トータルエバポレーション同位体希釈TIMS法を用いることで、微小量U濃度の定量分析法を確立させることを目標に、研究を進めた。まず、TIMS測定中に最も強いビームが得られる測定条件(イオン化促進剤など)の検討を行い、colloidal silicic acidを用いてUO2+を発生させる方法が最も適していることを確認した。次に、TIMS測定中に発生するブランクを極限まで低下させるため、イオン化促進剤などの試薬をイオン交換樹脂に通すことで、Uブランクを1 fg以下にまで低下させることに成功した。その結果、 1 pg, 0.5 pg, 0.2 pg, 0.1 pg のUを、それぞれ再現性 0.45%, 0.44%, 0.77%, 2.2%で測定可能にした。相対誤差はそれぞれ0.23%, 0.15%, 0.24%, 0.67%であり、いずれも再現性以内であったため、確度も問題ないことが確認された。
一方理論面では、プレソーラー粒子の中で最も精力的に研究されているシリコンカーバイド(SiC)の起源を再検討した。銀河内微粒子の移動、成長、破壊に関するシミュレーションを用いて、最も存在度の高いmain streamタイプのシリコンカーバイドが示すSi同位体比の再現を試みた。その結果、実測値を説明するには太陽系を形成した粒子が現在の太陽系の位置(銀河中心から8 kpc)よりも内側(銀河中心から約6 kpc)に由来することが明らかとなった。
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