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代謝シミュレーション、特に、ゲノムスケール代謝モデル（GSMM）シミュレーションとは、生物内の代謝反応ネットワークをゲノム情報に基づいて記述したモデルの数値シミュレーションであり、現在、発展目覚ましいシステム生物学の根幹をなす技術の一つである。GSMMシミュレーションを用いることにより、外部からの酸化ストレス等が、生物の代謝に与える影響を詳しく調べることが可能である。本研究では、GSMMの研究が、最も進んでいる大腸菌（E. coli）を例にとり、プラズマ照射による大腸菌の代謝反応変化（ストレス生成）を解析するシミュレーション・システムを構築し、これにより、プラズマ医療の大きな課題である、低温大気圧プラズマ照射による滅菌作用の生物学的機構を定量的に解明する方法論を確立することを目的とした。この研究で得られる知見をもとに、将来は、プラズマ滅菌機構の実験的研究の更なる進展と、人体等動物細胞に対するプラズマ照射の生理学的影響を定量的に解析するプラズマ・GSMM連成シミュレーション技術の開発への発展が期待される。２年目に研究においては、大腸菌のGSMMシミュレーションコードCOBRApyを用いて、大腸菌内の鉄硫黄クラスターを含む酵素フマラーゼ、アコニターゼ、DHADがスーバーオキシドアニオンラジカルO2-により不活化する際の代謝シミュレーションを行った。シミュレーションの結果、大腸菌の成長率は、フマラーゼやアコニターゼの不活化によって、あまり影響を受けない一方、DHADの不活化に、大きく減衰することが明らかになった。これは、DHADが、分岐鎖アミノ酸の生成経路に直接関連するためである。大腸菌の成長がプラズマ照射により阻害された場合においても、TCA回路がほとんど影響されないため、大腸菌の酸素呼吸はほとんど影響を受けないこともシミュレーションにより示された。
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