研究実績の概要 |
大気圧アーク放電を利用したプラズマウィンドウは大きな差動排気系なしに大気と真空を隔離する一方,荷電粒子や軟X線に対しては透過率が高い革新的インターフェースとして期待されている.我々はこのプラズマウィンドウを大気中での電子ビーム溶接や軟X線透過窓として活用することを考えている.本研究は,定常高密度アークプラズマを発生させるため,カスケードアーク放電のひとつであるTPD (Test Plasma by Direct current) 型プラズマをベースとした放電源を製作し,実用的プラズマウィンドウ装置を開発することを目的とする. TPD型放電源を小型化し且つ電子温度1eV以上,密度1e16/cc以上の定常高密度プラズマを発生させるため,新たに装置の設計・製作を行った.放電部サイズは直径:120mm, 長さ:100mm,重量:15kg以下である.放電ガスはArで,放電部圧力は5~100 kPaとした.プラズマウィンドウ性能は放電特性,電子温度密度計測により調べた.なお,温度・密度計測には可視分光器を用いた. 開発したアーク放電源を用いることで放電電流50Aにて大気側・真空側圧力比4桁の圧力勾配を発生させることに成功した.現実的なプラズマウィンドウは圧力比5桁以上の実現が不可欠と考えられているため,さらに一桁高い値が要求される.これには放電電流を100Aとすることで目標値を達成できると考えている.一方,プラズマパラメータは分光スペクトル解析により,陽極で温度1eV, 電子密度2e16/cc,電離度は約4%と評価された.圧縮性流体力学によると陽極出口では流れが音速(Mach number=1)で密度が約半分に低下することを考えると,放電チャンネル内の密度は5e16/cc以上と考えられる.従って,放電電流増大により容易に1e17/cc以上の高密度プラズマ発生の目途が立った.
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